第6話 試練の日

 「しっかし、戦えたのかエレナは。」


 俺とエレナはシルラルク邸近くの森で魔獣討伐をしていた。


 「一応ある程度の体術はできますが私は基本援護向きです。」


 弓を腰背中にに携えてるエレナは少し不機嫌そうに言った。


 「そうかー。

 後ろは任せるよ。」


 「わかりました。」


 ―――――


 二時間前


 「魔獣討伐?」


 俺に師匠が出来て半年が経った。

 最初の頃は剣が重くてまともに動けなかったが、最近は大分筋肉がついてきて動けるようになってきた。

 師匠曰く吞み込みが早すぎるらしい。

 ちょっとは戦えるんじゃないかと思ってきていた俺に師匠は魔獣討伐を提案してきた。

 

 「そうだ。

 カツミは最初三か月素振りなどで基礎をしっかり固めたからなのか上達が異様に早い。俺が嫉妬するほどに。

 なら次にカツミに必要なのは経験だ。」


 「確かに基礎はしっかりしてますが。

 何故大技の方が先ではないのですか?」


 やはり剣を扱えるといってもまだ師匠からまぐれで一本しか取れていない。

 その程度の剣技では魔獣にダメージを与えられるとは思えない。 

 そうなると大技が使えるようになりたい。


 「私たちの流派である染式流は当人に合った剣技を己で習得し磨くものである。

 戦いの中で相手をどういう剣技で討つかは自分で得るものだ。」


 「でも少し危険ではないですか?

 いきなり実践投入は。」


 「大丈夫だ。

 近くの森にはさすがに天災級の魔獣は出ない。」


 そういわれたならやるしかない。

 一応師匠の言うことだし強くなるために必要なんだろう。


 ちなみにこの世界の剣技にはやはり流派があった。

 国が推奨している剣技は

 返し重視の「透式流とうしきりゅう

 力重視の「威式流いしきりゅう

 からめ手大好きの「妖式流ようしきりゅう

 の三つに分けられ、騎士が剣を学びたいとなると大体この三つらしい。

 

 染式流は遠い昔に国から排除された流派で先人たちが意地とプライドだけで残してきたらしい。

 何をして国に排除されたのかは俺は知らない。(というより師匠が教えてくれない。)

 そして剣聖の名は国から与えられたものではなく受け継いでいるものらしい。


 「とりあえず行きますけど、俺は何すればいいんですか?」


 「とりあえず狼を狩ってきて。

 証人としてエレナについて行ってもらうから」


 「「え!?」」


 なんか俺だけじゃなくエレナも驚いていた。


―――――


 「そういえばさ。エレナとあんまり話したことないよね。」


 「確かにそうですね。」


 「なんていうんだろうね。

 今もだけど少し俺を見る目が敵を見る目に感じる時があるんだよね。」


 「………そんなこないです。」


 図星なんだろうな。なんでだろう?俺何かした?

 そんな会話をしてるうちに本日何匹目かの狼に遭遇する。


 「エレナ!」


 「わかってます。」


 エレナが矢を放ち牽制する。

 それで動きが止まった狼の首を俺が落とす。

 それはもはやただの作業だった。

 討伐が終わった後は解体して土に埋める作業だ。

 これが戦うよりきつい。

 無心になりつつ解体してるとエレナが突然質問してきた。


 「気持ち悪くならないんですか?」


 「なんでそんな質問するんだ?」


 「だって私は最初は気分が悪くなったんです。

 人間じゃないとはいえ、生き物を殺してバラバラにして。

 嫌悪感とかはあなたには無いんですか?」


 「別に嫌悪感が無いわけじゃないよ。

 ただ仕方ないと割り切ってるだけ。

 殺すことは申し訳ないと思ってるし。だからちゃんと埋葬するんじゃないか。

 エレナだってそう思ってるから埋葬まで一緒にやってくれるんじゃないの?」


 「そうですね。

 すいません。変なこと聞いちゃって。」


 そういうの純粋に言われると罪悪感湧くんだよなあ。

 俺が嫌悪感を持たないのは一回人を殺してるからだからだろうな。

 そんなことを考えながら埋葬まで終わり、次の獲物を探そうとしたとき。


 「っ……。エレナ気をつけろ。」


 さっきまでの狼とは気配の差が天と地程ある。

 一体何者だ?

 そして俺たちが相手の姿を捉えたとたん


 「な……んで。ど……うして此処に。」


 エレナが突然怯えだした。


 「どうした?エレナ?

 クソっ……。なんだあいつ。」


 「なんで此処に龍人りゅうじんがいるの?」


 まじで?

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