異世界転生修業編

第5話 俺に師匠ができた日

 目を覚ますと今まで経験したことがないほど豪華なベッドで寝ていた。

 転生は無事にできたみたいだ。

 意識が途切れる前のオーディンの言葉を思い出す。


 『言い忘れてたが君には4年の猶予を与える。要はあちらの世界で十二歳成人4年前からスタートだ。その間に強くなれ。』


 「なんでそういう事をギリギリで言うんだよ。」


 とか文句を言いつつベッドから出て立ってみる。

 やはり心なしか背が低くなってる気がする。

 そんなことを考えていると部屋のドアがノックされる。


 「失礼します。」


 入ってきた人を見て俺は絶句した。

 何故かって?

 メイドだよ。俺は人生で初めて見たよ。

 しかも、金髪で鋭い目つき。そして、かなりの美少女だ。


 あれ?向こうもなんか驚いてね?

 とりあえず何か言わないと、


 「えーと、ここはどこ?そしてあなたは誰?」


 そう話掛けるとメイドは我に返って、


 「ご主人様―、例の人が目を覚ましましたー。」


 とか言ってどこかに行ってしまった。


 しばらくするとさっきのメイドとは違うメイド(こっちもかなりの美人)が来て、


 「お目覚めになられたようで何よりです。早速ですが、この屋敷の主人があなたにお話を聞きたいとの事ですが、今からでもよろしいでしょうか?応接室へ移動することになりますので、もちろん後でも構いません。」


 「良いですよ。なんだか助けてもらったようですし。お礼もしたいので。」


 話せることなんてほとんど無いんだけどね。

 だって前世の話は信用できる人以外に話さない方がいいって言われたもん。

 そんなことを考えていると応接室の椅子に座るように促される。

 

 「ではヨーマ様中へお入りください。」


 メイドがそう言って入ってきたのはかなり若いイケメンの男だった。

 その男が俺の対面の席に座って話が始まる。


 「私の名前はヨーマ=シルラルク。

 一応これでも剣聖だ。君の名は?」


 ヨーマはどっかの映画のタイトルみたいな名前の聞き方をしてきたがスルーする。


 「俺の名前はカツミ、十二歳。

 特に何も紹介できる肩書はありません。」


 するとヨーマは笑いながらヨーマは詰め寄ってきて、


 「君みたいな子供に肩書なんて求めていない。しかし、ねえ君?どこから来たの?何するためににあの森にいたの?」


 後で聞いた話だがあの森とはこの屋敷の近くにある魔獣の出る森のことらしい。しかも俺はそこに倒れていたそう。

 それを助けてくれたのか素直に感謝だな。

 しかし、どこから来たか。言えないんだよなー。

 黙秘権を使おうか。


 「言えません。」


 「言えませんじゃ困るんだよなー。

 親の名前とかは?」


 「言えません。」


 「じゃあこれからどうするの?」


 確かに俺はどうすればいいんだろう?

 そういえばオーディンは


 『転生後誰でも良い。剣を教われ。自力はそれでカバーするんだ。』


 とか言ってたな。

 つーかこの人剣聖って言ってなかった?

 この人に教われば俺はいいんだろうけど、この人がいいって言うかな?

 でも、迷ってもしょうがない。華怜ともう一度会いたいんだから。


 「剣を教わりたいです。」


 「え?」


 「聞こえなかったですか?剣を教わりたいんです。剣聖であるあなたに。」


 「何一つ質問に答えない君が剣を教えてもらえると?」


 「それは…。」


 確かにそうだ。

 こんな身元の分からない子供を。ましてや何一つ質問に答えない子供に教えるなんてあるわけないだろう。

 でも俺は、


 「それでも剣を教わりたい。

 強くなりたいんです。」


 「これはどういっても引かないな。そんな目をしてる。

 ならせめてこの質問に答えてくれ。答えによっては剣を教えてやる。」


 そうヨーマは諦めたように言った。


 「本当ですか。」


 「ああ。質問の答えに満足したらな。」


 ならどんな質問にだって答えてやる。

 流石にさっき答えないと言った質問は持ってこないだろう。

 そんなことを考えているとヨーマから質問がとんできた。


 「何故そんなに強くなりたい?」


 なんだそんな質問か。

 答えなんて決まってる。


 「幼馴染を助けるためだ。」


 「幼馴染を助けるのに何故力がいる?」


 「もう幼馴染がどこにいるのか分からない。でも俺の手の届かない場所で危険な目に合うかもしれないっていうのは分かってるんだ。

 だったら俺は俺の手で幼馴染を助けたい。

 また一緒に笑いたい。そしてその笑顔を守りたい。

 それが剣を教わりたい理由だ。」


 「そうか。」


 「駄目ですか?」


 「いや良いよ。

 明日から私はお前の師匠だ。三年以内に剣聖の名を渡せるくらいに強くしてやる。」


 その言葉を聞いた瞬間俺は心の先から歓喜した。


 「とりあえずこの屋敷の使い方はそこの金髪の方のメイドのエレナに聞いてくれ」


 「わかりました。ヨーマさん。」


 「カツミこれから私のことは師匠と呼べ。」


 「了解です。師匠。」


 こうしてシルラルク邸での修業が始まったのだった。


 「明日から頑張るぞー。」


 そう言って気合を入れるカツミと面白くなさそうにカツミを見つめるエレナだった。

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