13 セレーネの決意

その日の夜、夕食を食べ終わり部屋でお茶を飲むエマのところにセレーネが来ていた。


(ねえ、お母様が言っていたから気になってお父様のことを見てきたの)

「……一回も帰ってなかったの?」

(まあね、嬉しくてずっとベンジーのところにいたから……帰りたいなんて思っていなかったし……猫ちゃんならわかるんじゃない?私の気持ち)

「そうなの?」

「……さあ?エマの方がそうなんじゃないか。日本に戻りたいと思うか?」

「私は……もし戻りたいと思っても戻れないし……かといって戻りたくはないけどね。今、とても楽しいし……」

(そうでしょ?)

「……それで?セレーネのお父様はどうだったの?」

(そう、お父様なんだけど、お母様の言う通りだったわ……自慢のふさふさの髪が気の毒だっわ。あれ、正気に戻って鏡をみたら倒れちゃうわね)


セレーネはソファーでごろんと寝転がりながら笑っていた。


「お嬢様とは思えないな……」


ウィルは、はぁーっと呆れたようにため息をついた。


(だって元に戻ったらこういうことできないでしょ?だから最後に行儀悪いことしているの)

「え?最後にって……」


飲もうとしてティーカップを持っているエマの手がピタッと止まった。


(そう、戻ることにしたの!お父様やお母様をみたら、ね……それにベンジーがね、二人の問題だから一緒に説得しようって言ってくれたしね)

「やっとか、最初からそうしろよ」

(あら、猫ちゃん、そんなこといっていいの?)

「………」


セレーネは、ウィルをみて含み笑いをし、ウィルはプイッと横を向いてしまった。


まただわ……セレーネはウィルの何を知ってるの?ウィルは隠したいみたいだし……

今はいいか……


「で、セレーネはいつ戻るの?」

(今日はね、ベンジーにべったりくっついて明日戻ろうかなって。だからいろいろ話を聞いてくれたエマに挨拶しようと思って)

「え………今日で最後ってこと?」


エマはティーカップをテーブルに置いて俯いた。


「エマ……?」


ウィルはエマの手に頭をスリスリとした。


(ふふ、そんなに寂しがるなんて、あなた私のこと大好きね!)


セレーネはエマをみて足をパタパタしながら喜んでいる。


「だって……せっかく仲良くなったのに……戻った方がセレーネのためにも良いのはもちろんなんだけど……」

(バカね、戻っても友達として会いに来てちょうだい!私も会いに行くわ!エマが言っていたお泊まり会もしましょう!ふふ、せっかく私の友達第一号なのよ?光栄に思いなさい)


エマは俯いていた顔をパッとあげセレーネを見た。


「お泊まり会!!ふふ、必ずしようね!約束よ」

(あなたって子供ね……ふふ。そうそう!私から、エマに何かお礼をしたいと思っていたんだけどね、ちょうどいいのがあったのよ!)

「お礼……?」


(そう!お父様の様子を見に行くついでに街に行ったの。この状態最後だからぶらぶらしようかなって)

「楽しんでいるわね……」

(その時ね、「なんで私が殺されたの?なんで……」てぶつぶつ言いながらさ迷っている女性がいたから、マートン探偵事務所のエマを訪ねるといいわ、その子あなたの姿みえるだろうからって伝えたの!ふふ、仕事をもらってきたわ。あ、私の依頼料は別だから、探偵事務所もみてみたいし、遊びがてら支払いに行くわね)


じゃあまたね、お父様を説得できるように頑張るから!と言ってセレーネは帰っていった。

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