11 シャノワーヌ家
ここは、セレーネが意識が戻らなくなってから一ヶ月経ったシャノワール家。セレーネが寝ているベッドの横には椅子が置かれ、そこには目の下がたるみ、何日も寝ていない様子の隈ができた中年の男が座っていた。
「セレーネ……すまない、私が悪かった……目を覚ましてほしい……」
───コンコン
「あなた、セレーネの様子は?」
「ああ、イネス……変わらないよ……」
イネスと呼ばれる女は男に近づき手を肩にのせた。
「マルク、あなたも休んでくださいな。あなたまで倒れてしまいますよ」
「……私は大丈夫だ。それより、ベルナールのところから手紙が届いたと聞いたがなんだったんだ?」
「ええ、ルイーズからでした。お茶でもしないかと」
「そうか……セレーネもいつ目が覚めるかわからない。君も気晴らしに行ったらいいよ」
「……そう、ありがとう。行かせてもらうわね」
「ああ、セレーネのことは私がみているから心配しなくて良いさ」
◇◇◇
ルイーズがイネスに手紙を出したその日に返事が届き、翌日の午後にイネスがベルナール家へやって来た。
「イネス、よく来てくれたわね。毎日気を揉んでいたんじゃ、あなたも倒れちゃうわ。今日は堅苦しいのはなしにして気分転換していってちょうだい」
「ありがとう。ルイーズは明るいから一緒にいるだけで気分が楽になるわね」
「ふふっ、そうでしょう」
(お母様……)
「イネス、私の娘のエマを紹介するわ。今はやりたいことを見つけて、マートン探偵事務所で働いているの」
「探偵事務所?確か16歳と聞いていたけれど……ああ、ごめんなさいね。私はイネス・シャノワーヌよ。あなたのひとつ上にセレーネという娘がいるの」
「エマです。セレーネのことは存じています。その……友人なので」
エマは友人という言葉がくすぐったいかのように照れ臭そうに挨拶した。
(エマ……こっちまで恥ずかしくなってくるわ)
「セレーネに友達?初耳だわ。あの子、素直で優しい子なんだけれど甘やかされて育ったからわがままで自分勝手でしょう?友達がいるなんて話は聞いたことなかったから驚いたわ。それにルイーズのところのお嬢さんなんて……セレーネと友達になってくれてありがとう」
「いえ……友人になったのはつい最近なんですけどね」
「最近?最近って、だってセレーネは「そうそう、エマがね、セレーネさんからベンジャミンさんとの話聞いていたようなのよ」
(あなた探偵事務所で働くなら言葉には気を付けなきゃダメじゃない)
……その通りすぎて何も言えない
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