7 深夜の訪問

「え?」


エマは驚いて飛び起き、ソファー見るとエマをみてにやにやと笑っているセレーネが座っている。


(なんだ、あなた裸じゃなかったか。ふふ、ちんちくりんと思っていたのに良い男を連れ込むなんて……ふふ)


「ち、違うわよ、そんなんじゃないから……それに今猫のはずよ」


エマは隣のウィルを見ると、先程まで猫の姿だったウィルが人間に戻っていた。


「なんでこのタイミングで戻っているのよ!」

「はは、戻っちゃったな」


(あら、あなたあの猫ちゃんなのね、ふーん……ふふ、裸ね。邪魔してごめんなさいね)


「だから違うって!」


(……て、あなたのその紋章って)


「紋章?セレーネさん、紋章知っているの?」


(えぇ…だってそれ……)


「ああー!!」


ウィルが急に大きな声を出した。


「なに?急にびっくりするじゃない?」

「悪い悪い、この紋章な!この国の騎士団の紋章なんだよな」


ウィルが慌てだした。


「セレーネさんは、知っていたんですね。私はウィルに教えてもらって初めて知ったんですよ」


(へぇ~……ウィルっていうのね、そう……)


「俺、この姿だとセレーネさん見えないし、聞こえないからあとで教えてくれ。ふぁ~明日も早いし寝るわ」


ウィルはエマ達に背を向けて寝てしまった。


「ちょっと。ウィルったら」


(まあ、いいじゃない。彼にも……そのいろいろ事情があるようだし、こっちに来て女同士で話でもしましょう)


「ガールズトーク!?する!!」


(ガールズトーク?)


友達とガールズトークするの憧れていたのよね!!


エマは立ち上がりセレーネの座るソファーへ移動した。


「セレーネさん、こんな遅くにどうしたんですか?」

(あなたにお礼を言いに来たのよ。ベンジャミンにね、さっき部屋で言われたの………)



────ベンジャミンが泊まる屋敷の客室でのこと(回想)


「……セレーネいるのか?」

(隣にいるわ)

「………もしいるなら、そうだな……この本を一ページ捲ってほしい」


机に開いて置いた本のページがぱらりと捲られた。


「……いるんだね………階段から落ちて意識がないと聞いたときが心臓が止まるかと思ったよ……その、本当に大丈夫なのか?」

(大丈夫よ)


本がまたぱらりと捲られる。


「そうか……よかった。ごめん……僕は何も知らなかった……それに、シャノワーヌ様に言われるがままに出てきてしまった。エマお嬢様の絵を描き終えたら、シャノワーヌ様のところへ行くよ。会ってもらえるかわからないし、許してもらえるかわからないけれど、時間がかかっても絶対に認めてもらうから……だから、セレーネも戻ってほしい」


本がぱらぱらと、二ページ捲れた。


「……嫌ってことか?」


ぱらりと一ページ捲れた。


「……セレーネ、エマお嬢様にも無理言ったみたいだけど。お礼は言ったの?」


ぱらぱら


「明日にでもお礼は伝えた方がいいよ。私達の問題に巻き込んでしまったんだ」



────


(だからね、謝りに来たの)

「ベンジャミンさんは、明日にでもっていってましたけど?」

(早い方がいいと思って、へへ)


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