6 セレーネの依頼

セレーネがどういう状況で今ここにいるのかをベンジャミンに説明し、セレーネ本人しか知らないことをエマはベンジャミンに伝えた。


「……初めてキスをしたところは温室。二度目は私の部屋、三度目は「わ、わ、わかりました、信じますので、やめてください!!」」


ベンジャミンの顔は赤く染まっていた。


お気の毒様……


(もっと思い出話をしたいのに……)


「もっと思い出話をしたいのに」

「いえ、もう大丈夫です!……それで、セレーネはいつ戻るのでしょうか」


(嫌よ、今戻ったらベンジー以外の男と結婚させられるわ)


「嫌よ、今戻ったらベンジー以外の男と結婚させられるわ」


(どうにかこの子が、お父様を説得させて私とベンジーの仲を認めさせるから、そうしたら戻るわ!)


「どうにかこの子が、お父様を説得させて私とベンジーの仲を認めさせるから、そうしたら戻るわ………て、何で私!?」


エマは、ぱっとセレーネを見ると、セレーネは両手を顔の前で握り、目をうるうるさせながらお願いのポーズをしていた。


「エマ様……一旦持ち帰った方が良いんじゃないですか?」

「………そうね。セレーネさん、この返事は明日でも良いですか?」


(……わかったわ、私も無理を言ったわね……でも頼れるのはあなただけなのよ)


「………私、人の役にたちたいと思って探偵事務所で働いているんです……セレーネさんのお役にたてるように頑張りますね」


(嬉しい!ありがとう!!)


「エマ様……何言われたんですか?どうせ、あなただけが頼りとか言われたんじゃ」

「にゃー」


ジュードとウィルは呆れた顔でエマを見た。


「………セレーネが何を言ったのかわかりませんが、私もシャノワーヌ様に誠意をみせて説得しようと思います」


(ベンジー……!!)


セレーネはベンジャミンに抱きついた。


「……えーっと、今感激したようでセレーネさんがベンジャミンさんに抱きついています」

「そ、そうですか」


ベンジャミンは照れたようにはにかんだ。



明日の午後にエマ達は探偵事務所に戻ることになっているため、続きは明日早い時間からと、この日はお開きとなった。



◇◇◇


その日の夜遅く、注意してもベッドで寝るウィルに諦めたエマは、ウィルと隣で寝ることが日課となっていた。そして今も、猫の姿のウィルとベッドの上で横になりながら昼間のことを話している。


「それにしても、本当にエマはお人好しだな」

「……だって、頼れるのは私だけって言うんだもん。そんなこと言われたらやるしかないじゃない?」

「はぁー……あの人絶対わかってて言ってたな。で、どうすんの?」

「一応ね、ジュードとも話してマートンさんに連絡はしておいたわ。どうしたら良いかしら……」

「エマのお母さんさ、セレーネのお母さん……イエネだっけ?仲良くなりたいって言っていたよな」

「イネスよ。そうね、言っていたわね……お母さんに明日相談してみようかな」

「それがいいな」


(あら?こんな時間に男を連れ込むなんて、あなたなかなかやるわね)


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