2 画家ベンジャミン・バルテ
エマの湯欲みが終わり化粧をしてドレスに着替えていると、ルイーズが入ってきた。
「どう?終わった?」
「あとドレスに着替えるだけです」
ココはコルセットでウエストを締め上げている。
「久しぶりだから苦しくて辛い……」
「ふふっ。たまには華やかに着飾っていいじゃない?」
ルイーズはソファーに腰を下ろした。
「画家なんだけどね、ベンジャミン・バルテと言って、以前は芸術愛好家のシャノワーヌ家がパトロンだったの。シャノワーヌ家に行ったときに飾ってあった絵を見て惚れたの!紹介しようかと言われたのだけれど、シャノワーヌ家がパトロンだったし……ほら、あそこ、昔からアルノーと馬が合わないでしょ?奥様のイネスは、温厚な方で仲良くしたいんだけどね………この前イネスが開いたお茶会に呼ばれたのだけれど、以前飾ってあった絵が全部なくなっていてね、聞いたらもうパトロンをやめたっていうのよ。ご主人のマルクとベンジャミンが揉めたらしくてね、ご主人がひどく怒っていたようよ。でもね、私が絵を気に入ってたのを知っていたからイネスがこっそりベンジャミンの居場所を教えてくれたの」
ルイーズは、ふふっと嬉しそうに話した。
「話したら喉乾いたわ。終わったら応接室に来てくれる?準備はしてあるわ。私は先に行ってマーヤにお茶淹れてもらってくるわね」
ルイーズは今回も忙しなく部屋を出ていった。
「そういえば……イネスの娘、事故に合ってから意識が戻らないって聞いたわね……あまり表沙汰にしていないようだから言わなくてもいいわね」
ルイーズは呟き、そのまま応接間へ向かった。
「……エマ様と奥様って似ていますよね」
「そうね、顔は似ているわよね」
「違いますよ、性格ですよ」
「あはは、まさか!」
「…………」
「…………」
二人はお互いに顔を見合わせてにこっと笑い合った。
「さあ、支度が整いましたので行きましょうか」
「……わかったわ」
私って周りから見たらあんな感じなの?でも……お母様のあの性格可愛らしいし、明るくて馴染みやすい感じは好きなのよね。ココがそう思って似てるって言ってくれるなら嬉しいわね
◇◇◇
───コンコン
「お待たせしてすみません」
「こちらにいらっしゃい」
部屋に入ってきたエマにソファーに座っているルイーズは手招きしてエマを呼んだ。
「ふふっ、お話ししていた三女のエマです」
「初めまして、エマです」
エマはカーテシーをして挨拶をした。
「ベンジャミン・バルテです。このような機会をいただき、とても光栄です」
ベンジャミンはお辞儀をした。
「二日間、大変だと思いますが宜しくお願いしますね」
「はい」
「さあ、挨拶はこのくらいにして、時間もないからはじめてもらいましょう。ジュード、あとは宜しくね」
「はい、お任せください」
ルイーズは部屋を出ていき、ジュードは扉の前に立った。
「母が無理を言ってすみません」
「いえ……正直に言いますと、普段はこういう依頼は受けないんですけど、お恥ずかしい話ですが仕事がないもので……宜しくお願いします」
ベンジャミンは頭をかきながら絵を描く準備をした。
「私はどこでポーズをとれば良いかしら?」
「ああ、先程ソファーを移動させていただいたので、こちらのソファーにお座り下さい」
「にゃー」
エマが指示されたソファーに腰を下ろすと、ウィルがいつものようにエマの膝の上に乗ってきた。
「あら、ウィル。あなたも一緒に描いてもらいたいの?」
「にゃー」
「良いですね、そちらの猫も一緒に描きましょうか」
「ありがとうございます。ふふっ、良かったわね」
エマはウィルを撫でながら微笑んだ。
(なによ、ベンジーったら!私以外の子を描くなんてひどいわ!)
いつの間にか、ベンジャミンの横に、若くて綺麗な女性の霊が立っていた。
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