9 定食屋での調査1

「ここです………二番地五八〇、バート・ウィズリーの家です。確かに先日亡くなって、現在息子のダンが住んでいますね」


ロンは資料をローテーブルに置きメアリーが座っていたソファーに座った。

シーナは奥の机で、メアリーの依頼を記録している。


「ありがとう、ロン。ふむ……まずは遺言書があるか確認しなければいけないな。ロンはメアリーさんの息子を調べてくれ。シーナはポールが帰ってきたらこの依頼を説明して遺言書を受け取ってきてほしい。私とエマ、ジュードは定食屋へ行こうか」


マートンは、指示を出しそれぞれ動き始めた。


「ウィルはどうする?」


ウィルは首を横に振った。


「そう、ここでミシェルと留守番ね」

「にゃー」


はぁー……猫の姿だと可愛くて膝の上に座らせちゃったわ。気を付けないと


「それじゃあ、二人とも行こうか」

「「はい」」

「ミシェル、シーナ達が出ていったら鍵をかけるのを忘れずに」

「はい、気を付けていってらっしゃい」


三人は定食屋へ向かった。



◇◇◇



「………アロー定食」

「ここですね」

「そのようだな」


三人は定食屋につき、早速中へ入った。


────カランカラン


「いらっしゃいませ」


店内には、綺麗な顔をしているが年齢のわり老け込んだ40半ばの女が奥の厨房で調理していた。


「お客さん、すみません。店番が私しかいなくて、申し訳ないのですが空いている席に座ってお待ちください」


三人は、店内を観察できる入り口横の角のテーブル席が空いていたのでそこに座ることにした。

店内は四人掛けのテーブル席が五卓あり、そのうち二卓に他の客がいた。


「せっかくだから食べていこうか」

「いいですね!」

「俺、B定食にします」

「私は……A定食にします」



「おや、見かけない顔だな。ここは初めてかい?」


隣のテーブルに座っていたお爺さんが話しかけてきた。


「いや……前に一度だけ妻と来たことがありましてね、今日は近くに来たので懐かしくて寄ってみました。」

「そうかい、わしは毎日のように来ているよ。ここは旨いし安いし、わしみたいな孤独な年寄りには助かっとるよ」

「そうですか……つかぬことをお伺いしますが、以前来たときは男性の店員もいたと思うのですが今は彼女一人なんですか?」

「ああ……」


お爺さんは椅子をマートンの横に持ってきて前のめりになりひっそり声で話し出した。


「ここの婆さんが死んでから息子のピーターが働いているとこなんぞ見たことがない。外に女がいるようでな、昨日も派手な女と夜に五番地を腕組んで歩いているところを見たよ」

「……何時ごろだったかわかりますか?」

「うーん……8時過ぎだったな」

「他にもみたことありますか?」

「この店の二軒先に住んでるヴァンも先週、わしがみた女と歩いているところみたと言っていたな」

「ほう……」

「なんでそんこと聞くんじゃ?」

「いや、この手の話が好きなものでつい……」

「そうかい、あんたもわしと一緒で暇なんじゃな」

「ははっ、そうなんですよ」


「A定食、お持ちしました」

「おお、待ってたよ、ありがとう」


お爺さんは話をやめて自分の椅子を戻し、食べ始めた。


「お待たせしてすみません、ご注文はお決まりですか?」                                               

「はい、A定食を一つ、B定食を二つお願いします」

「はい、只今お作りしますのでお待ちください」


女は水を置き、注文をとるとすぐに厨房へいってしまった。


「あの女性がジュリーさんですよね」

「そうみたいだな」

「マートンさん、すごいですね。臨機応変に対応してさすがです」


ジュードはエマの言葉に、うんうんと頷いている。


「ありがとう。あぁ、でもこの店に来たことあるのは本当だよ」

「奥さん亡くなられているんですよね?」

「ああ、五年前にね」

「……メアリーさんのようにいたら話したいと思いますか?」

「それは……どうだろうな」


マートンはにっと笑ったがその表情は悲しげだった。

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