7 お婆さんの霊1

9:30

エマはジュード、ウィルを連れて探偵事務所へ初出勤し、掃除をしていた。


「霊のお婆さんいつくるんだろうな~」


ロンは箒を持ち箒に頬杖をついている。


「ロン!またサボってる!ちゃんと掃除しなさいよ」

「へいへい」


シーナに怒られたロンはあびをしながら掃除を始めた。



(もうやっているかしら?)

「いらっしゃいませ……」


エマはドアを振り返ったら、昨日のお婆さんがドアの前にいた。


「……え」

「エマ……誰もいないけど……」

「もしかして霊のお婆さんか?」


皆一斉に手を止め、ドアの方をみた。


(ふふっ、見えているのはお嬢さんだけなのね)


お婆さんは、ソファーに座った。


「そうです、私だけです……ロンさん、マートンさんを呼んできてもらえますか?」

「わかった」


ロンは駆け足で二階の書斎にいるマートンを呼びに行った。


「……それで、私に頼みたいことってなんでしょうか」

(まあまあ、座りなさいな)

「……はい」


エマがお婆さんの向かいのソファー座ると、ぴょんっとウィルが膝の上に乗って座った。エマの斜め後ろにはジュードが控えている。


ポールはランばあさんに頼まれた落とし物を探す依頼のため外出していて、キッチンではミシェルがシーナにお茶を出した方が良いのかひそひそと聞いていた。


「本当にいるんですよね?霊もお茶飲めるんでしょうか……」

「どうなんだろう……一応お客さんだし出しておこうか」

「そうですね……」


ミシェルはお茶を持ってエマ達のところへ来て、ローテーブルに置いた。


「失礼します。どうぞ……」

(ふふっ、親切にありがとう)


お婆さんはミシェルを見てにこと笑った。


「……ありがとうとお礼を言っているわ」

「そうですか……」


ミシェルはぺこりと会釈をしてキッチンへ戻った。


(あの子、見えていないのね……そうかい、残念ね)

「……そうですね」


とそこへ、


「お待たせいたしました……えー、お客様はこちらかな?」


マートンが来てエマにお婆さんが座っていることを確認し、エマは頷いた。


「初めまして。私はこの探偵事務所のマートンです。申し訳ないのですが、私はあなたの姿が見えません。この子……エマは今日からここで働く新人でして、私も一緒に話を伺っても宜しいでしょうか。とはいえ、聞こえないのでここに座っているだけになっていしまいますが」

(おや、ハンサムな男ね。いいわよ、あなたもここにいて聞いてちょうだい)


エマはマートンを見て再び頷いた。


(私は、メアリー・アロー。二年前に死んだの。原因は老衰ね)

「メアリー・アロー……」

「……メアリーアロー?……三番地の定食屋の?」

(そう、その定食屋のよ。友人の二番地に住むバート・ウィズリーにね、遺言書を託しているのよ)


「……遺言書?」


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