2 歓迎会1
エマは驚き声を上げそうになって、よろけそうになったところをジュードが支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
「……大丈夫よ。ありがとう、ジュード」
エマはお婆さんを見る。
(あらまあ、驚かせて悪かったねぇ)
「……いえ」
(私のことを見える人に会ったのは初めてなもんでね、嬉しくてつい)
「……そうですか」
お婆さんは、嬉しそうににこにこしながら話を続けた。
(お喋りもできるなんて嬉しいわ。せっかくだし、頼みたいことがあるのよ。聞いてくれるかい?)
「頼みたいことですか?」
ジュードとロンがポカンとした顔でエマのことを見る。
「……エマ様、もしかしてですがそこに何かいるんですか?」
「そう……お婆さんが私に頼みたいことがあるって言っているの」
「そうですか……でもここでは人目もありますし、初めてのことなのでマートンさんもいた方が良と思います」
「そうね……お婆さん、マートン探偵事務所に明日来ていただけますか?」
(ええ、いいわ。突然でごめんなさいね。マートン探偵事務所ね、明日伺うわ)
お婆さんの霊はにこっと穏やかに笑ってすっといなくなってしまった。
「………お婆さん明日探偵事務所にいらしてくれるって」
「……そうですか」
「全然見えなかったけど、霊って本当にいるんだな」
ロンはとても興奮した様子で目を輝かせて言った。と、そこへ
「きゃっ」
エマが足元をみると、先程までいなかったウィルがエマの足に顔をすりすりしていた。
「ウィル、あなたどこに行っていたの?」
「にゃー」
「全く……」
エマはウィルを抱き抱え、家に戻ることにした。
その頃家では、ミシェルが夕食を作り、シーナがそれをテーブルに運んでいる。そこへ、マートンは買ってきたケーキをシーナに渡し、壁に飾りつけをしているポールの手伝いをしていた。
「素晴らしいできだな。ミシェルの料理も美味しそうだ」
「エマとジュード喜んでくれるかしら」
「ジュードの見た目、シーナのタイプだしな」
「そうそう、背も高くてがっしりしていてかっこいいわ~!お嬢様を守る従者っていうのも最高ね」
「シーナは本当、惚れっぽいよな!花屋んとこの息子がかっこいいって言って通ってたな。この花もそこで買って来たんだろ?」
ポールはテーブルに花瓶に生けてある花を指さした。
「そう!ジンさんっていうのよ」
「へ~」
「さ、準備はこれでできたかな?」
マートンは、パンッと手を叩いて空気をかえた。
そこへ
「ただいま」
「只今戻りました」
はは
エマ達が帰って来た。
「「おかえり」なさい」
「マートンさんもいらしていたんですね……わぁ!すごいご馳走ですね」
「ああ、今夜はエマとジュードの歓迎会だからね、みんなで用意したんだよ。さあ、座って」
「「ありがとうございます」」
二人はお礼を言い、皆それぞれ席についた。
「エマ、ジュード、そしてウィル、マートン探偵事務所へようこそ。君たちが来てくれて嬉しいよ。慣れない環境だ。仕事のことも、他のことでも何でも聞いてくれて構わない。これから宜しく。では、乾杯」
「「「「「「乾杯」」」」」」
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