11 猫の名前
湯欲みを終えたエマは、猫にどこで寝てもらうか考えていた。
猫ってどこでも寝れるのかしら。今までペットを飼ったことがないからわからないわ。
ココに大きめのタオルを数枚、用意してもらった。ふわふわだし……ソファーに敷いたら寝れるわよね?聞きたいことはいろいろあるのに話せないんじゃ困ったわ……
───カリカリカリ
ん?何この音………ドア?
エマはドアをそっと開けると「にゃー」と濡れたままの猫が入ってきた。
「ちょっと!あなた!ビショビショじゃない!!」
「にゃー」
猫は、ぶるぶると体を振り水を飛ばした。
「全く……」
エマは、タオルを手に取りしゃがみ込み猫を拭いてあげた。
ドタドタドタと廊下を走る足音が聞こえる。
「はぁ…はぁ……エマお嬢様、申し訳ございません。洗っていたら逃げ出してしまって……」
慌てて走ってきた使用人をみると使用人の洋服もビショビショに濡れている。
エマは、猫を見ると猫はフイッとそっぽを向いた。
「あなた、逃げてきたのね……あとは私がやるから大丈夫よ。大変だったようね、洗ってくれてありがとう」
「いえ、失礼します」
使用人は、エマにお辞儀をして退室した。
エマに体を拭いてもらった猫は、そのままベッドの上に行き、寝ようとしている。
「ちょっと!あなたの寝る場所はそこじゃないわよ!ソファーにタオル敷いたから、そこで寝てちょうだい!あなた男でしょ?いくら猫だからって一緒には寝れないわ。あっちに行きなさい」
エマはソファーを指差した。
猫は、チッと舌打ちをしてソファーに移動した。
「……今舌打ちしたわね?…あなたの行動子供っぽいわ……いくつなの?それに、猫って呼ぶのもちょっとね……そうね、コタロウにしましょ!」
「…………」
「ちょっと!コタロウ、聞いてるの?」
「…………」
「なによ、寝たの?勝手すぎるわね。……おやすみ」
エマはコタロウが返事をしなかったので、寝ることにした。
夜もすっから更けて人々が寝静まった頃。
いつの間にかソファーで寝ているはずのコタロウの姿がなくなっていて、代わりにエマが寝ているベッドの上で、エマの隣に、黒髪に赤い目をした見目の良い青年が裸で寝ころがりながらエマを見ている。
「全く、本当にお人好しだな。助けようとして自分が死んでるし、知らない猫拾って飼おうとしてるし……呑気に無防備に寝ているし」
男は、エマの頬っぺたを指でつんつんと触ったり鼻を摘まんだりして遊んでいた。
「起きねーな…………寝るか……」
男はそのままエマの横で寝始めた。
◇◇◇
翌朝、エマが起きると横にはコタロウがいた。
「おはよう……ここで寝たのね?」
「にゃー」
コタロウは返事して起き上がり、ベッドサイドのチェストにぴょんっとジャンプして乗った。
「にゃー」
コタロウの足元にはメモがあった。
そこには、「ウィル」と書かれていた。
「これ……あなたの名前?」
「にゃー」
「そう……コタロウって名前気に入ってたのに残念ね」
その後、エマはマートンと連絡を取り三日後からウィルを連れてルームシェアをすることになった。
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