9 報告とお願い
マートンの言葉に、エマは目を見開いた。
「……良いんですか?」
「あぁ、エマくんにしかできないこともあるだろう。でも、これは遊びではない、仕事だ。お嬢様扱いはしないよ。辛いことも必ずでてくるだろうけれど「働かせてください!!」」
エマはローテーブルにバンッと両手をつき、勢いよく立ち上がった。
マートンは、にっと笑い右手をエアに差し出した。
「これから宜しく、エマ」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
エマはマートンの手をとり握手をした。
その後、改めて探偵事務所で働く、ロン。ポール、シーナ、そしてミシェルを紹介された。ロン、ポール、シーナは探偵事務所から徒歩五分にある家でルームシェアしていて、マートンが仕事で帰りが遅くなるときは、ミシェルも泊まっているようで、エマも通うのが大変であれば部屋も空いているので家族の許可が下りれば住んでくれて構わないとマートンから説明があった。
エマ達が馬車に乗り家に着いたのは,日が暮れた後。
玄関の扉をジュードが開け、エマ達は中へ入り使用人達に出迎えられた。
「おかえりまさいませ」
「ただいま。ココ、ジュード、今日は一日付き合ってくれてありがとう」
「いえ、とんでもございません。エマ様、お先にお食事の準備をしてきますね」
「ありがとう」
ココは帰りの馬車で遅くなったため部屋で食事をしたいとエマに言われていたので、食事の準備をしに行った。ジュードも「失礼します」と言いこの場を後にした。
「エマ様、旦那様がお呼びです」
「わかった、今行くわ」
「……そちらの猫はどうされたのでしょうか?」
「え……?」
エマは足元を見た。
「にゃー」
そこには赤い目をした黒猫が座っていた。
「あなた……」
「にゃー」
「…どうなさいますか?」
「……ごめんなさい。可愛くてつい拾ってきてしまったの。お父様には私から言うわ。私の部屋に連れていってくれる?」
「かしこまりました」
「ありがとう。よろしくね」
エマはアルノーのいる書斎へと向かった。
ーーーーコンコン
「お父様、エマです。入ってもよろしいでしょうか」
エマが呼び掛けると、中から
「あぁ。入ってきなさい」
と返事が聞こえた。エマはドアを開け中に入る。
「只今戻りました」
アルノーは仕事をしていた手を止めて、エマに座るように言い、エマの向かいのソファーに腰を下ろした。
「おかえり。どうだったかな?」
「働かせてもらえることになりました!まだ全て信じてもらえているわけではないので、そこはまだ知り合ったばかりなのでこれから信じてもらえるように働きます」
エマは生き生きと目を輝かせている。
「ははっ。良い顔だ。頑張りなさい」
「はい!頑張ります。それで………」
「なんだ?」
「せっかく働けることになったので、働くならしっかり働きたいです。身分とか関係なしに。朝も早いですし、帰りも遅くなるときもあるので……探偵事務所の方達が、事務所のすぐ近くにの家でルームシェアをしているようなので……私もそこで暮らしても良いですか?」
アルノーは、眉をしかめ苦い顔をして唸ったが、エマが根気強く説得したかいがあり、ジュードを連れて行くことと休みの日は必ず帰ってくることを条件にしぶしぶではあるが、許してくれた。
そして、サンについても、相手が同じ使用人のピエールで、籍を入れ、使用人棟の一室で暮らすことになったと教えてくれた。
エマは、フンフフフ~ンと鼻歌を口ずさみながら部屋に戻った。
サン、良かったわ。籍を入れるのね……何かお祝いも考えましょ!それに、ルームシェアか……前世では考えられないわ
ちょっと憧れていたのよね。ふふっ。楽しみだわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます