8 実際に

「さ、行こうか」


エマ達とマートンは街中を歩き始めた。


「霊は普段からそこら中にいるのかい?」

「そうですね……わりと多いかと。普段歩いていると、人に紛れているというか……一見、霊か人間かわからない時もあります」

「怖くはないのか?幽霊と聞いたら怖い印象の方が強いだろう」

「……慣れました。ほとんどの霊が未練を残し成仏できないでいるんです。……怨念を抱いた霊は少し怖いと思いますが……いずれはそういう霊の気持ちを晴らしていければ、と思っています」

「…なるほど」


エマはキョロキョロ街を見ると、立ち止まった。


「そうですね…例えば……、あそこで果物を売っている女性がいますよね?」

「ああ、あの少しふくよかな女性だね」

「えぇ。足元に犬がいるのですが、見えますか?ココとジュードも見える?」

「……いや」

「私も見えません」

「俺も」

「……どんな犬なんだい?」

「…毛の色は茶色、目の色は黒ですね。三日前になくなったおじいちゃんのようで、いつもここで果物をもらっていたようです。名前もポワロと彼女につけてもらったようです」

「……ふむ」


マートンはエマ達にここで待つように言い、女性のところへ行き、話しかけた。


「すみません。妻と娘がアップルパイを焼くからおつかいを頼まれてね、パイに合うりんごはどれですか」

「いらっしゃい。アップルパイね……それならこのりんごが良いよ」

「では、そのりんごを三個ください」

「はいよ」


女性がりんごを選んで袋に詰めていく。


「付かぬことをお伺いしますが、先日こちらにき来た際、茶色で目が黒の犬がいたと思うのですが、その犬はいまどちらに?」

「ああ、ポワロのことかい?……三日前に死んでね…もう年だったしね。野良犬だったんだけどなついてくれていてね、よくここに座っていたんだよ。あまりになついてくれて可愛いもんだから毎日果物あげていたんだよ」

「……そうですか。それはさぞかし寂しいでしょうね」

「そうだねぇ……はは、つい話し込んでしまった。すまないね。はい、これ」

「いえ、こちらこそ。ありがとう」


マートンは代金を支払いりんごを受け取って、エマ達のところへ戻った。


「おまたせ」

「いえ……それで……」

「君の言っていたことと同じことを彼女に聞いてきたよ。詳しいことは事務所に戻ってからにしよう」

「……はい」


この様子を少し離れた家の塀の上からジーッと見ている赤い二つの目に、エマは気がつくことはなかった。


◇◇◇


ーーーカランカラン


「ただいま」

「おかえりなさい」

「さ、かけてくれ」

「はい、ありがとうございます」


帰ってきた三人はソファーに座り、ミシェルが茶を淹れなおし、三人にだした。

マートンは奥に行き、シーナ、ロン、ポールに先程のことを説明した。エマがチラッと見ると、ロンは目を輝かせ「すげー」と言いながらマートンの話を聞いていた。

マートンは、シーナ達と話し終わり、エマ達のところに来て腰を下ろした。


「エマくんの霊視の力のことだは、まだ半信半疑ではあるが……働いてみるかい?」


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