7 探偵事務所2

マートンと思われる男が下りてきてエマ達はすっと立ち上がった。男は笑いながら


「初めまして。アルノー殿の娘さんだね。私がこの探偵事務所のマートンです」


アルノーは簡単な挨拶をし、「どうぞ」と座るようにすすめ、三人は座った。


「初めまして。エマ・ベルナールと申します。こちらはココ、ジュードです。お会いできて光栄です」

「こちらこそ光栄だ。昨日、アルノー殿から今朝手紙が届いて驚いたよ。ここで働きたいんだって?」


なんだ、客じゃないのか、とロンがボソッと言い、ポールに脇腹を肘でどすっとつつかれた。


「失礼します。どうぞ」


ミシェルがお茶を出す。


「ありがとうございます」

「あぁ、この子は私の娘でね、ミシェルだ。年は13歳。ときどきこうして手伝ってくれてるんだ。それから、あそこにいるのが助手。右がロンで左がポール。それから、主に事務をしてくれているナンシー」


エマ達はペコッとお辞儀をした。


「早速だが、君は霊視ができるんだって?」

「……はい」


ミシェルはビクッと驚き、ポールとナンシーは眉を潜める中、ロンが


「霊視って幽霊が見えるのか?」


と目をキラキラ輝かせて言った。アルノーがロンに向かって、人差し指を口にあて、しっとした。


すげー!かっけー!とロンが小声ではあるが興奮しているのが伝わってくる。


「えぇ、霊が見えたり声が聞こえたり……生きている人間の声は聞こえないのですが、先日はお腹の子の声が聞こえました」

「……ほう………おもしろいな」

「……おもしろいですか」

「あぁ、悪い。霊視できる人に初めて会ったもんでね」

「いえ、おもしろいと言われたのは初めてで……」

「まあ、そうだろうね。ミシェルも怖がっているし、ポールとナンシーは不可解な面持ちでいる。ロンは……」

「珍しいですね。他の人には見えないですし、怖がる人が多かったですから…信じてもらうのは難しいですね……」

「そうだね。私も信じがたい」

「そうですよね……」

「…………」


マートンは暫く黙って考えた後、


「ふむ……そうだな、うん。実際にみてみたいな。少し、一緒に散歩でもしに行こうか」


名案だ!というように手を打った。


「……わかりました」

「では、さっそく。あ、君たちは留守番だ。ぞろぞろと歩いたら目立つからね」

「えー!!」


ロンはがっかりし肩を落とした。マートンとココ、ジュードが先に外に出て、エマが外に出ようとしたとき、ミシェルに呼び止められた。


「あの、怖かったわけではないんです。その……」


ミシェルの後ろをエマがじっと見る。


「えぇ、大丈夫です。わかってます」

「………」


ミシェルは、ペコッとお辞儀をし、奥にいってしまった。


はぁー……


エマはため息をついてから外へ出た。

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