6 探偵事務所1

翌日、エマは簡易なワンピースを着て、馬車に乗り街へ向かった。街の近くまで来ると目立ちたくないため馬車置き場に馬車を置き、ココと護衛兼従者のジュードと歩いてマートン探偵事務所を探すことにした。


「マートン探偵事務所……地図でみるとこの辺いだと思うんですけどね……それらしい看板は見当たりませんね」

「探偵事務所だから大っぴらに看板出すと人目気にして入りにくいっすからねー」

「そうね……」


エマはマートン探偵事務所に行くと決めてから、不安ではあったが二人に事情を説明した。ココは「なんですかそれ!楽しそう」、ジュードは「へ~、すごいっすね」と、二人とも楽観的な反応だったので、エマはこんな反応をする人もいるのねと呆気にとられた。


なかなか見つけられずにいるので、通りを歩いている婦人に声をかけてみることにした。


「すみません、この辺りにマートン探偵事務所があると聞いたのですが、場所がわからなくて……ご存じありませんか?」

「あぁ!マートンさんとこなら知っているよ。先日うちの猫がいなくなったから見つけてもらったのよ。あなたも何か探し物?あそこは探し物を見つけるのが得意なのよ」

「……そうなんですね」

「あら、ごめんなさいね。場所ね、マートンさんところはあそこよ。あのクリーム色の外壁に赤茶色の三角屋根よ。看板は出してないみたいだから見つけにくいのよね」


婦人は指を差し教えてくれた。


「あそこですか。教えていただきありがとうございます」


エマはお礼を言い、三人で教えてもらったマートン探偵事務所へ向かった。



◇◇◇



ここはマートン事務所。部屋の中はアンティークな家具が置かれている。一階は応接間となっていてソファーとローテーブル、両サイドの壁には本棚が置かれていてぎっしり本が並べられている。奥には、机とテーブル、簡単なキッチン、トイレがあり、二階にはマートンの書斎、がある。


「今日も暇だなー……」

「落とし物やペット探しばっかりだもんな。昨日なんてランばあさんの世間話を聞いただけ……」

「「平和だなー……」」


そう会話をしている二人の男は、ソファーの背もたれによりかかり、足をひろげだりしなく座っている。


「ちょっと!ロン!ポール!今日はマートンさんがお客さんが来るって言っていたわ。だらけていないでミシェルの掃除、手伝いなさいよ」

「毎日掃除ばかりでつまんねーよ」

「シーナさん、いいんですよ、もう終わりますから」


ミシェルと呼ばれる少女は本を手に取って拭き、しまいなおしている。

そ、そこへ


ーーーカランカラン


エマ達が入ってきた。


「いらっしゃいませ」


奥の机で仕事をしていたシーナが立ち上がり、出迎えに来た。

ソファーからは、やった、客だ!という声がきか聞こえてくる。

シーナがキッとロンとポールを睨むと二人はピシッと座り直した。


「すみませんね、どうぞこちらへ」


シーナは、ロンとポールにしっしっと手で追い払い、エマ達に座るように言った。


「いえ、お構いなく……父の紹介でマートンさんに会いに来ました。エマ・ベルナールです。マートンさんはいらっしゃいますか」

「マートンさんの……マートンを呼んで来ますのでおかけになってお待ちください」

「はい、ありがとうございます」


ロンが二階に行き書斎にいるマートンを呼びに行った。エマは、ココとジュードにも座るように言い、座った。三人で部屋の中をキョロキョロ見ていると


「お待たせして申し訳ない」


二階からストライプのスーツをビシッと着こなしたスマートな中年の男が下りてきた。


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