4 嬉しい言葉
「えっと…その……勘…かな?」
声が気になってあとのこと考えていなかった……
エマがどうしようかあたふたしている姿を、マーヤは鋭い目付きで見ている。
「エマ様、正直にお話しください」
マーヤは、女主人であるエマの母に昔から娘達には厳しく接する役を任されているため、エマはマーヤに逆らうことができない。幼少期からお転婆だったエマに注意することができる使用人は、マーヤだけであった。
はぁー……マーヤのこの目、昔から苦手なのよね……言っても信じてくれるかしら……もし前世のように怖がられたら…
でも、もしかしたら……
「あのね、信じてもらえないかもしれないのだけれど……サンのお腹の中から声が聞こえたの」
「……えーっと…それは……どういった……」
いきなりこんなこと言われても理解できないわよね…
「サンの場合は、お腹の中にいる子の声だけれど、私ね……霊の声が聞こえたり、見えたりするのよ」
「……霊…ですか」
「そう。ふふっ。こんなこと急に言われても信じられないわよね、ごめん」
エマはニッと笑顔をマーヤに向けたが、その笑顔は悲しげだった。
混乱して当然よね…
はぁー……今世もひとりで生きていかなきゃだめかしら。言わなきゃよかった……
長い沈黙のあと、マーヤがエマを見て口を開いた
「……………いえ、話は聞いたことがありますが、実際にそのような方にお会いしたことはないので……」
「…そうよね、今言ったことは忘れてちょうだい」
エマはドアを開けた。
「お待ちください!……この国では稀少ですが、魔法が盛んな国もあります……その、何が言いたいかと言いますと…確かに信じがたいことではありますが、この世界には不思議なこともたくさんあります。エマ様のような方がいてもおかしくはあしません。それに……エマ様はこのような嘘をつくような方ではございません……信じます」
マーヤの予想外な言葉に、エマは一瞬思考がとまった。
「…………信じてくれるの…?」
エマが泣きそうな顔になるのを見たマーヤは、やはりエマが本当のことを言っていると悟ったかのように、微笑んだ。
「えぇ、信じます」
「そう……ありがとう」
エマの目からポツリと涙が頬をつたった。
マーヤは、「失礼します」と言いハンカチで涙を拭った。
「このことを他にご存じの方はいらっしゃいますか?」
エマは首を横に振った。
「そうですか…」
「…サンのこともあるし、私が屋敷中を走ってたのを皆見ていたわ。いずれお父様も耳にするはず……嘘をつきたくない……でも本当のことを言うのが怖い。気味悪がられるのではないかって……」
マーヤは、泣いているエマの背中を優しくさすった。
「旦那様でしたら大丈夫ですよ。エマ様のお話、きっと信じてくださいます」
「……そうだといいわ。ありがとう……マーヤに話して良かった…」
エマは、ひとりで考えたいことがあると言い、自分の部屋へ戻った。そして、マーヤも食堂を後にし、主人がいる書斎へと向かった。
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