2 今世の私

「エマ様、エマ様!起きてください!!」


 さっきから誰かが呼んでいる……


 「エマ様!」


エマ?私は地味で根暗なぼっちの鈴木さんよ!


エマと呼ばれる少女はゆっくり瞼を開ける。


ここは……

私、車に跳ねられて死んだんじゃ……助かったの?


 少女は目をきょろきょろと動かし、状況を確認する。


「エマ様、寝ぼけているんですか?」


 女の方を見る。


「……エマ?……そう、私はエマ……」

「エマ様?変な夢でも見たんですか?早く支度しないと朝食に遅れますよ」

「……そうね。ありがとう、ココ……」

「……いえ」


ココという次女は眉をしかめ、エマをみる。

そして、エマはココに着替えを手伝ってもらい食堂へ向かった。


エマは、家族といつも通りに朝食を食べ部屋に戻ってきて今朝の夢のことを考える。


 今朝の……夢よね?ココが言うように夢を見て寝ぼけていただけかしら……


…………違う、確かに私の記憶だったわ。生々しい記憶……

……前世………前世?知ってるわ!夢の私は鈴木みな子、日本に住んでいた……そこで流行っていたわね、異世界転生の小説。……これ、きっと異世界転生だわ!!


 エマは机に紙を置きペンを持って鈴木みな子だった前世と思われる記憶を箇条書きに書いていく。


・日本人

・鈴木みな子

・高校2年生

・物心ついたときから霊が見える記憶がある

・声も聞こえる

・気持ち悪がられてぼっち

・両親からも距離を置かれていた

・猫を助けようとして死ぬ


 猫……無事で良かったわ。元気でいるかしら……


それにしても前世の私はいつもひとりで寂しい人生だったわね。17年って短いじゃない。


今世では、両親やお姉様たちから愛されて育っているのが救いだわ。



私の名は、エマ・ベルナール、侯爵家の末っ子で16歳。


 父 アルノー

 母 ルイーズ

長女 ミレイユ

次女 オディル の5人家族だ。


先程の侍女はココ。ココの母親はエマの乳母であり、年も18歳と近いので幼少期から私ととても仲が良い。


 そして、ここはルークベルア王国。


日本で学んだ堅苦しい貴族とは違い、貴族制度はあってないようなもの、とても緩い。


恋愛主義で、国王と王妃も恋愛結婚だと聞いた。


 良い環境に生まれ変わったな………前世の短く寂しい人生を神様が気の毒に思ってこの世界に転生してくれたのね!


ふふっ。根暗だったのもこう考えたら気持ちも明るくなって良いわね!!


 ん???なんか聞こえる……


(苦しい……苦しいよ……重たいもの持たないで……苦しい…)


……何この声、まさか……?


どこから聞こえてくるの……?


 



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