動揺 美咲side
私の名前は朝比奈美咲です!もう16年も雪斗の幼馴染をやっています!こんな始まり方をしちゃうと私の性格がこんな感じってばれちゃうんだろうなー。
まあ、私の性格の話はこの辺にしておいて。実はですね、私秘密があるんです!なんと、幼いころから「運命の赤い糸」が見えるのです!「何言ってるの、頭おかしいんじゃない?」って思ったでしょ?でもね、これが本当なんだ。私は物心ついた時から、運命の赤い糸が見えていた。誰かに「これは赤い糸ですね」なんて証明されたわけじゃないけど、ほぼ間違いないと思ってます!なぜなら、そう私はずっと観察してきたからです。街行く人を、友達を、家族を、ほかにもいろんな人を。そしたら、夫婦で赤い糸がつながっていない人は見たことない。ああ、つながっていない夫婦は離婚しちゃったけどね・・・ここまで言ったらさすがに信用できるでしょ?しかも、不思議なことにこの赤い糸はほかの人には全く見えていないようだった。幼稚園の頃に雪斗に聞いたけど、「分からない!」って言われちゃった。もしかしたら、恋愛をつかさどる神様とかが設定ミスっちゃったのかもね!
そしてそして、何ともう一つ秘密があります。実は私、いつもあんな感じでふざけちゃうけど、雪斗のことが好きなんです。気づいた時には恋に落ちてました。え?知ってたって?まっさかー。そんな顔に出てたかな?
全く、なんであんなだらしない男を好きになっちゃったんだか。でもね、いいの。私と雪斗はその「運命の赤い糸」で結ばれてるんだから。いつもふざけてばっかりだけど、この糸がつながっているから全く焦りが生まれてこないって感じ。
今日も一緒に登校するためにちょっと離れた雪斗の家に行ってピンポンを押す。すると、いつも通りおばさんが笑顔で迎えてくれた。
「あら、美咲ちゃん、来てくれたのね!ありがとう。雪斗今日も起きてこないのよ・・・美咲ちゃん、いつも悪いのだけど、お願いしてもいいかしら?」
「はい!任せてください!では目覚まし時計美咲!出勤します!」
「ふふ、ほんといつもありがとね。」
そう、雪斗が起きてこないときの私の日課。今日も張り切って起こしに行っちゃうぞー!
* * * * *
雪斗がようやく支度を終えて家から出てきた。
「もー、雪斗。もっと早く起きてよね!」
「ごめんごめん!ちゃんと次から起きるから!」
「雪斗いっつもそういう癖に起きないじゃん」
いつものようにしょうもない会話をしながら学校への道をだらだら歩く。私はこの時間が割と好きだ。ずっとこのままでいいのになーなんて思ってしまう。昨日会ったテレビの話とか、友達とやった面白いこととか、たまには勉強の話をしたり。そんな何気ない日々を私は心から楽しんでいる。
よし、今日はテレビの話をしよう!と思って前を向きながらだらだらと話す。話したいことが多すぎて反応も気にせずしゃべってたけど、ふと雪斗の返事を聞いていると、「うん」「たしかに」「へぇー」といった生返事しか返ってきてないことに気づく。どうしたんだろう、って思って雪斗のほうを見てみると、雪斗は自分の左手の方を凝視していた。え、どういうこと!?まさに「運命の赤い糸」が結ばれてる方の手じゃん。まさか、雪斗にも見えるようになったのかな。昨日まで一回もそんなそぶりは見たことなかったし。
私はそれが見えるのが日常すぎて今日は確認してなかった。そうして自分の手に結ばれた赤い糸を見て、驚愕してしまう。昨日まで雪斗とつながってたはずの私の赤い糸は全く違う方向へ伸びていた。
(え?え?え?なんで?どういうこと!?)
私は動揺してしまう。そして、それと同時にとてつもない不安に襲われる。私は雪斗の運命の相手じゃ・・・なくなったってこと?そう思うと急激に悲しみに襲われた。今までずっとつながってたのに・・・なんで・・・
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