第216話


 私が、初めて自分の言葉で告げた気持ち。


「え……まやちゃん……?」


 何度も瞬きをして、状況を飲み込むのに苦戦している様子。


「好きになってくれて、ありがとう」


 そう言うと、ぐっと口をつぐんで何かを我慢しているように眉間にしわを寄せた。


「私の最初って言ったって、全部なくなったわけじゃないでしょ?お泊りしたのも私の部屋に彼氏を入れたのも凛が初めてだよ。それに……まだはじめてはたくさんあるでしょ?これからの初めてと私の最後は、全部凛にあげるよ」



 「いってきます」って言ったら

 「いってらっしゃい」って


 「ただいま」って言ったら

 「おかえり」って


 そんな他愛のないやりとりを夢見たでしょ?



 その約束だって決して軽い気持ちでしたわけじゃない。




 凛はいつも「俺のほうが何倍もまやちゃんをすきだから」って言うけど──私だって凛のこと、だいすきなんだよって知ってほしかった。



「まやちゃ……」


 凛の声が震える。


 顔を見ようとするがぎゅっと抱きしめられ、顔を私の肩に押し付けていたため見えなかった。



「ありがとう……ほんとにほんとに大好き。もう俺、今の言葉だけで生きていける……」


 きっと涙を流している凛は、どうしようもないくらい愛おしい私の彼氏。



「そんなおおげさな……」

「ほんとだもん」


 ばっと顔を上げたかと思ったら、私が世界で一番だいすきな──太陽みたいに眩しい笑顔で



 「愛してるよ」って私にキスをした。



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