第214話
「──もう俺、そのときからまやちゃんしか眼中ないんだよね」
「この人を惚れさせるくらい、いい男になろうって、決めたんだ」
……言ってもいい?
記憶にないんだけど。
なにその上から目線。そして無駄なくらいの男前。
そんで……なにこいつ。
マジで惚れるタイミング分かんないし、そんな前から私のこと好きだったの!?
「──で、たまたま、まやちゃんを見つけたのが高校の入学式!!運命かと思ったよ。まやちゃんを探そうって意気込んでも、名前すらわかんなかったから……。ま、どうせ駆けずりまわっても見つけ出すつもりだったんだけどね」
……まあ、凛ならやるでしょうね。
「そっからは簡単!!伊達に顔広いわけじゃないし!バイト先が分かって、見に行ったんだけどもう近くで見たらすんごい可愛くなってるし……いや、あのときから可愛かったんだけど!!見つけた瞬間、どうしようもなく好きだーーって思って、呼びだしちゃった」
彼と出会った日のことは今でも鮮明に思い出せる。
あんな衝撃的な出来事、忘れたくてもできないよ。
「でも、あれはさすがにやりすぎだったとは思ってる。しかも俺の事覚えてないみたいで結構ショックだったしさ」
悲しそうに目を伏せた凛。
だけどすぐに顔を上げて、元彼を見据える。
「頑張ったかいあって、たくさんの女の子に告白されたし、モテるようになった。……だけど、まやちゃんに好きになってもらわないと意味がなかったんだ。すごく必死でかっこわるいくらい。だけど……やっと手に入れた、誰よりも大切な彼女だから。これからも絶対に手を離したりしない」
第三者にだって恥ずかしげもなく愛情を公開する私の彼氏には敵わないなって思う。
「ね!?俺らは深――い絆で繋がってんの。だから邪魔すんな?」
さっきまでのほほんと慣れ染め話を語っていたのに、これまた突然キッと睨む。
「それに、これ以上まやちゃんに近づいたら……俺、なにするかわかんないよ?」
元彼に近づいて肩にポン、と手をのせる。
「……いや、そんだけ愛を語られて勝てる気なんてしねえよ」
苦笑する元彼は「俺、今彼女いるし」と言うから凛は意表を突かれた顔に。
「後は、お二人でどーぞ~」
なんてどこぞのお見合いの決まり文句を吐いて帰って行った。
去り際に、チラリと私を見て。
……知ってたのね。
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