神永君は溺愛彼氏
第211話
「──あれ、マヤ?」
……どうしてこのバイト先には、私の会いたくない人が来てしまうんだろう。
レジ前で私に絡んでくるこの男。
はじめは顔なんてちゃんと確認してなかったから分からなかったけど。
「……久しぶり、マヤ」
私を呼び捨てにする声に顔を上げた。
「げ」
……最悪だ。
そこにいたのは、高校に入ってから先生を忘れるために付き合ったことがある元彼。
出会いは確か陸の試合の応援に行ったとき。声をかけられた他校の生徒が彼だった。
この男とは一番長く続いた……って言っても半年くらい?
凛と出会うほんの少し前に、陸との関係に口を出されてブチ切れ、別れを切り出したんだった。
私の目の前でニコニコと笑ったままの男。
一般的にはイケメンの部類だったはずだけど、今の私には凛が基準になってしまっているから特に何も感じない。
「あれ……まやちゃん?」
大きく鳴った店のドアのベル。
走りこんできた凛が私と彼とを交互に見る。
「凛……」
今の彼氏に目を向けてホッとする。
だけど腐っても元彼(失礼)。伊達に半年付き合ってたわけじゃなかったみたい。
私の緩んだ表情に気がついたのか
「マヤ、誰?」
凛をちらりと見て「お、イケメン」なんて呟いている。
その「イケメン」の凛は、目の前の男が私を呼び捨てにしたことが気に食わないようで。
形のいい眉がぴくりと動く。
「俺の!!!!まやちゃんに何の用ですか?」
……「俺の」だけやたらと強調したな。
ずんずんと鼻息荒く近づいてくる凛。
「……この男は、誰?」
私にこてん、と首を傾けて可愛く問いかける。
「俺??俺はマヤの元彼だけど……?」
聞かれてもないのに勝手に答える男。
やましいことがあるわけじゃないから、バレたって構わないんだけど……。
また、面倒くさそうな展開の予感。
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