第210話



「私が邪魔して、別れてくれたら……きっと陸先輩がマヤ先輩を慰めるでしょう?そうなったら二人は晴れて付き合うことに……っていう私の計画だったんですけど……」


 美琴ちゃんが嘘をついているような様子もなくて、むしろ今までの彼女よりも自然体で喋っている気がする。


「翼なんて相手にされないだろうから、二人が喧嘩して別れるきっかけに利用しようとしたんですけど……キスまでするなんて想定外でした……。すみません、マヤ先輩。私の憧れのマヤ先輩を汚すなんて……許すまじ、西川翼!!」


 ……あれ、この子ってこんなキャラだっけ。



 西川君は全部知っているみたいで、彼女の本音や素を見聞きしても驚いた様子はない。


「俺は別に、二人は別れないって思ってたけど?……ま、俺の邪魔なんかで別れるくらいなら、俺がマヤ先輩をもらう気でいましたけど……。少なくとも、神永先輩の気持ちは揺らぐことないって思ってたから」


 彼が見せる自信はどこから湧いてくるのか。


 私自身だって不安でしょうがなかったっていうのに。


「なによ、それ」

 不満そうに顔をしかめた美琴ちゃんは西川君に食ってかかる。


「お前なんかが、マヤ先輩に勝てるわけないから。月とすっぽんじゃん」


 ……ん?


「……あ、たしかに」

「うん。たしかに」



 ねえ、おかしくない?これ私がおかしいの?



 美琴ちゃん、貶されてるよ?

 凛もそこはそんなに勢いよく同意しちゃダメだよ。失礼だって。



 私の周りには、キャラの濃い人が集まってきてしまうのか?



「ていうか、待って……」

 はっとする凛。


「まやちゃんて……女子にもモテるの……?」



 絶望的な顔をしている1名は放っておこう。



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