第208話



 月曜日、ようやく過保護な幼馴染からも心配性な彼氏からもオッケーをもらって登校することができた。



 朝練のあった陸は一緒に行けなくて残念そうにしていたけど──代わりに玄関の前で輝くほどの笑顔で待っていた凛がいて、一瞬思考が停止した。



 そんな私の髪を一撫ですると

「……ん。今日も可愛い」

 なんて真面目な顔で言うから、思考は一瞬で戻ってきた。


 そのまま二人で他愛のない話をして心地よい空気に癒される。



 学校へ着くとたくさんの女の子に声をかけられる凛。


 だけどその挨拶すら無視しているから、見ているこっちがハラハラする。



「神永先輩っ!!」


 とてもとても可愛い声が後ろから聞こえた。


 私の隣にいる彼の名前を呼んで、駆け寄ってきたかと思えば凛の腕に自分のを絡める美琴ちゃん。



 あまりの衝撃に言葉も出ない。





「……あれ、麻井先輩いたんですか」

 なんていけしゃあしゃあと言うもんだからイラッとした。


 ちらりと凛を見ると

「ふざけんな」


 顔を歪めて絡んだ腕を思いっきり振り払う。


 さすがの美琴ちゃんも、凛の表情におとなしく手を離していた。



「なんの真似?言っとくけど、これ以上まやちゃんに誤解されるようなことがあったら──俺、女子とか関係なく殴るからね?」


 冷たく響くその言葉にきっと偽りはない。


 そんな彼を見て、安心したのも本当で。彼女に立ち向かう勇気も、ちょっぴり出てきた。



「……美琴ちゃん。凛は、私の彼氏……だから。あんまり、ベタベタしないで……」


 そう言って、少しでも対抗しようと先ほど彼女がしたように腕を絡めた。



 目の前の彼女は、唇を噛みしめて悔しそうな顔をする。



 隣の彼は、顔を真っ赤にして照れている。


 先ほどの冷酷な顔が嘘みたいに。



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