第207話
──もしも二人がこのまま仲直りできなかったなら。
俺はマヤの心に入りこむことができただろうか。
……そんな答え、出るわけもない。現に二人は仲直りしたんだから。
だけど、それでいい。
マヤが辛い顔するくらいなら、凛の隣で幸せそうに笑っているほうが何倍もいいって思ったからだ。
──どうか、これからも俺の付け入る隙を作らないでほしい。
どうすればマヤを好きにさせられるか
少しでも俺にもチャンスがあるのか……考えて、期待してしまうから。
それならば、いっそ二人がなんの問題もなく幸せそうに笑っていてくれるほうが、諦めだってつくはずなんだ。
……今日、凛を見て思った。
やっぱり俺には「マヤの彼氏」なんて務まらないみたいだ。
胸ぐらをつかんだ時。あいつ、どんな目をしていたと思う?
俺を真っ直ぐ見つめて、覚悟を決めた顔をしていた。
俺に殴られることを
俺に怒鳴られることを。
それでも──。
それでも、あいつは殴られたってマヤの傍を離れないって……瞳がそう言っていた。
──「陸には敵わない」って?
馬鹿言うなよ。
俺はこれから一生かかっても「凛には敵わない」のに。
マヤの救いとなれる場所くらい俺が貰ったっていいだろ?
俺が一番欲しい場所は、これから一生かけたって手に入ることはないんだから。
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