真実

第205話


 凛と無事に仲直りした金曜日。


 土曜・日曜日はもう治りかけてる私の看病に明け暮れていた彼。


 些細なことでも心配して「安静にしてて!」が口癖になっていたくらい。




 土曜日、昼まで部活だった陸が私の部屋のドアを開けて

「──は?」

 と眉間にしわを寄せた。



 そしてベッドのそばで座っていた凛の胸ぐらを掴むと、無理やり立ちあがらせる。


「ちょっと、陸!?」

 慌てて止めようとするけど、凛が


「いいよ、まやちゃん」

 なんて言うからどうすることもできなくて、一触即発の彼らを見守るだけ。



「……マヤ」

 凛に鋭い目を向けたまま、私に声をかける陸。


「なに……?」

 その声から陸の気持ちは汲み取れない。


「仲直り、したんだ?」

 詳しいことは何一つ言っていなかった。


 だけど、陸はいつも全部分かってくれる。


「うん……」

 ゆっくり頷くと、軽くため息をついた陸は


「それは、二人ともが納得して?」

 眉をさらにきゅっと寄せる。


「そうだよ。誤解も解けた」

 凛は何も悪くないのに。


 弁解する気もないのか、陸の顔を見つめたまま……ただ黙って私たちの会話を聞いている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る