第204話
「まやちゃんだって──」
凛はポロっと口にした自分の言葉に、何かハッと気がついたような顔になる。
「……ねえ、まやちゃん。西川に……どこ触られたの?」
じろっと睨みつけるように私を見つめるけど──可愛いだけだぞ、それ。
「……は?」
「だって!!まやちゃんの肌がすべすべだったとか言ってた!!俺だってまだ恐れ多くて触れないのに!!あいつ何なの!?」
……なんか、だんだん凛らしさを取り戻してる気がする。
なんて呆れて油断してたら
「来て」
腕を掴まれて、ぐっと引き寄せられる。
久しぶりに包まれた凛の香りに、涙が滲んだ。
「……消毒」
その言葉とともに、ぎゅーっと力を込められた。
……出た、胸キュン製造機。
「──俺の、まやちゃん……だから」
いつも言ってくれてた言葉。
私はゆっくりと頷いた。
「……うん」
「もう、他の男になんてぜったい触らせないから……」
「……うん」
「まやちゃんは俺のことだけ、見てればいいの」
「……うん」
私が彼の質問に頷く度にさっきよりももっと強く抱きしめられていく。
しばらく沈黙が続いて、凛が大きく息を吸ったと思ったら
「ね、まやちゃん……。俺のこと、すき……?」
──きっとこれを聞くか悩んだんだろう。
凛の声が震えているから。緊張してるんだと思う。
……こんなの、頷かないなんて選択肢ないでしょ。
「──うん」
最後の質問にもしっかり頷くと──。
──その瞬間、唇をふさがれた。
凛の目から滴が流れ落ちて私の頬に触れ、合わさった唇にまで到達する。
少ししょっぱくて……でもとても、愛おしかった。
「……へへっ……ここも、消毒」
こんな泣き虫な、彼氏だけど。
心の底から、彼を離したくない。
──そう思った。
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