第203話


 泣き虫な凛のことだから、不安で仕方なくて毎晩枕を濡らしたんだろうなって、容易に想像がついた。


「……そんなの、私も一緒。凛がもう美琴ちゃんのこと好きになっちゃったかなって、不安でどうしようもなかったんだよ」


 私はこんな風に言葉にすることも少ないから、驚いたのか──彼の耳が犬みたいにぴくっと動いて、ゆっくりと顔を上げた。


「へへへ……っ」

 少し赤くなった目が私を捉えて、幸せそうに笑ったと思ったら……照れくさそうに鼻の下をこする凛。


 彼のコロコロと変わる表情は、ごく近しい人にだけ見せる凛の最大の魅力なんじゃないかな。


「ばかだなあ、まやちゃん……俺がどんだけまやちゃんのこと好きだと思ってんの。舐めないでよ?俺のこと、すきにさせるって決めたんだもん。諦め悪いんだから、俺」


 歯を見せてら笑う彼は、初めて会った時と何にも変わらない純粋な顔をしていた。





 私が立ちあがると慌てて一緒に立つ凛。


 彼に近づいて脇から手を入れ、背中に腕を回して抱きしめた。


「わ、わわわ……っ」


 凛は私の行動に動揺している。


 ぎゅうっと苦しくなるくらい力を込めると


「……美琴ちゃんとはどういう関係なの」

 と問いかけた。


 ……そう、私が一番気になっていること。



 どうして、美琴ちゃんとあんな体勢でいたのか。


 私の言いたいことが分かったのか


「……あの、あれは……。お邪魔虫が怪力でね……」


 なんて焦ったように説明し始める。


 まあなんとなく分かってたけど。


「……でもね!!俺、この前のでわかったんだ」


 私の肩を両手で掴むと身体を離す。


 覗きこんだ凛の瞳は──なぜこんなにもキラキラしているのか……。


「俺……まやちゃん以外で興奮しないんだなーって」



 ──出たよ、とんでもない爆弾発言。


「はい?」


 今までのムードとかぶち壊すよね。


 さすがだよ。


「下着が見えようが、触られようがなーんにも感じなかったよ。むしろ吐き気がしたもん」


 にっこり笑って言ってるけど──それ、美琴ちゃんにものすごい失礼なんだってわかってないよね?



 ……だけどまあ、ここまで言われたらなんか疑う気も失せる。


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