第201話



 お母さんからの密告から授業が終わる頃を見計らって玄関で待機。


 絶対、文句言って──じゃなくて、謝るんだよ、私!!


 お母さんは気を利かせて買い物に行った。



 しばらく玄関の段差に座って待っているとドキドキと緊張し始めたからうずくまって耐える。



 時々、時計を見てはため息が出た。


 すると突然、ピンポーン……と呼び鈴が鳴って、肩がビクッと震えた。



 ──麻井マヤ、勝負の時です。



 意を決してがちゃりとドアを開けると、目を伏せた凛の姿が目に入る。


 開いたドアの音に反応して、彼もこちらに視線を向けた。



 その綺麗な瞳に私を映すと、目を見開いて驚く凛。


 私が出るなんて微塵も思ってなかったんだろう。


 ……当り前だけど。



「……ま、やちゃん……」

 一瞬顔を歪めてから


 くるりと踵を返して、走り去っていく凛。



 ……そんなに嫌われたの、私?


 と結構なダメージを受けたけど、負けじと追いかけていく。



 ここで挫けてたらお母さんに悪いもん!!




「──まってよ!!」

 運動不足&病み上がりということもあって、全然進まない自分の足に苛立つ。


 いつもの公園の前まで来てさすがに体力がキツくなってきたから必死で凛を呼ぶ。



 私が追いかけてきていることに気がついて、立ち止まってくれる彼はやっぱり私の好きな優しい凛だ。



 だけど振り返って私の顔を見てはくれない。



 そんな彼と少し距離をとって


「結局、凛の想いはその程度なの!?弱虫!臆病者ーーっ!!おたんこなすーー!!」


 と叫んでみる。


「ちょ……まやちゃんっ!?」


 慌てた彼が、こちらを向いてくれたけど。

 もう、一度爆発したら止められなくなって


 溢れる涙と一緒にすべて吐き出していく。


「好きなんだったら会いに来てよ!!私に謝る機会もくれないの!?それとももう私のことなんて好きじゃなくなった!?」


 涙が彼からは見えないように距離をとったけど、結局──震える声は隠せるわけもなかった。



「な、泣かないで……まやちゃん」


 彼があわあわと動揺しているのが分かる。


 一瞬戸惑って、何か考えた後


「まやちゃん、近くに行っても……いい?」


 なんて今更なことを聞くもんだから、涙を手の甲でゴシゴシと拭きながらうんうんと頷く。


 恐る恐る私に近寄ってくる凛。



 薄暗い中、お互いの表情が見えるところまで近づいてきた彼は困ったような、でも少し嬉しそうな…

…複雑な顔をしていて


「……俺がまやちゃんを好きじゃなくなるわけ、ないのに……」


 そう声を漏らした。






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