第198話
「……ばかだよ、マヤは。隣に、こんだけ好きな奴がいるのに。……誰よりも、マヤのこと知ってるのに。それでも凛を選ぶマヤは──ほんとにばかだ」
陸の瞳から涙が一筋零れて、すやすやと眠るマヤの頬へ落ちていく。
そっと手を伸ばして親指でその滴を拭う。
その手つきは、壊れものを扱うかのように繊細で優しかった。
マヤは一度寝てしまうと、なかなか起きないことも陸は知っている。
自分の顔を少しずつ、愛しい彼女へと近づけた。
「マヤ……。マヤは知らないと思うけど、お前のファーストキスは初めての彼氏じゃなくて──」
一度、瞼に口づけると次は唇にそっとキスを落とす。
「──俺、なんだよ……?」
零した言葉はしんとした部屋に虚しく響いた。
「結局俺は……こんな風にずるいことしかできないんだよ……っ」
苦しそうに唇をかみしめて、物音をたてないように
──マヤの部屋を出たのだった。
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