何も変わらない

第196話



 ――柔らかい掌の感覚。


 誰かが私の頭を優しく撫でているのを感じて、うっすらと目を開く。


 視界に入ってきたのは私の顔を覗き込む幼馴染。


「……あ、起きた」

 陸はそう言い、目を細めて微笑んだ。


 ……また、陸に助けられたんだよね。



 身体を起こすと、さっきよりひどい頭痛が私を襲う。

 そんな私の眉間にできたシワに陸が気付いて


「どうした?どっか痛い?」

 と尋ねてくる。


 返事をする気力もなくておでこに手を当てて耐えてみる。


「頭痛いの?」


 彼の言葉に今度はうんうんと頷いた。


「熱は?測った?」

 

 あ、忘れてた……。


 そんな私の表情に気がついて、リビングから体温計を取ってきた。

 それを受け取って脇に挟む。



 しばらく待って電子音が鳴り何気なく見てみると


「!?」


 持ってきたビニール袋をごそごそ探りながら陸が「何度?」って聞くから慌てて体温計を布団に隠した。


「さ、37、7度!」

「嘘だろ」


 私の顔を見て即答し、腕を掴まれて体温計を出される。


「は!?38.7!?」


 慌てて私を寝かせて「病院……?いやでも……」とブツブツ呟いている。


「大げさだよ、平気だから」

 そう言うとデコピンをされた。


「ばか。お前になんかあったら、俺が平気じゃない」


 冷却シートを私のおでこに貼ってくれて袋をまた漁る。



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