ヒーロー再び

第189話



 ──怒った凛が保健室を出ていって、しばらく呆然としていた私。


 ふと我に返って

「追いかけなきゃ……っ」

 震える足を無理やり動かす。



 授業中のため、大体の教室は使われているはず。


 だからとりあえず、この時間は移動教室の自分の教室に来てみた。



 閉ざされた扉の向こうから話声が聞こえて、誰かがいることは明らか。


 だけどそれが凛なのかが分からず目の前の扉を開けようか迷っていると──。


 ──ガタン


 と物音がして


「ちょ、マジでふざけんな……っ」


 凛の声。



 中の様子は分からないけど、あまりいい雰囲気ではないことを感じ取って──慌てて戸を開けた。



「え……」



 ……どういう、こと?



 床に寝ころんだ凛の上に、美琴ちゃんが跨っている。

 そんな彼女の上半身は下着だけしか身につけていない。




 ……嫌でも、変な想像をしてしまう光景。



 美琴ちゃんは困ったような表情で私を見上げた。


 それもきっと、計算なんだろう。



 凛がこんなことするはずがない。

 きっと無理やり、押し倒されたんだとは思う。



 ……頭では分かっていても、心は追いついていかない。



 心臓が握りつぶされそうな感覚に陥って、ひとまずドアを閉めてみた。


「なにしてんの、私……っ」


 涙がぶわっとこみ上げてくるから、声が漏れてしまわないうちにその場から逃げだした。



 ……なんで。


 私だけを好きだって言ったのに。


 世界でいちばん大好きだよって言ってたのに。



 もう、凛は私に呆れちゃったのかな

 もう、愛してくれないのかな。


 ──あの子の方がいいって、言われたらどうしよう。

 

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