第188話


 お互いの想いが違うのに、俺がしっかりまやちゃんの手を掴んでおかなきゃいけないのに。


 まやちゃんを責めることなんてできない。



 まやちゃんの涙に動揺して、はっと気がついた時には目の前にまやちゃん姿はなく。



 ……また、俺は走り出す。




 ここで諦めちゃ、元も子もない。


 どれだけまやちゃんが怒ってても、たとえ許してもらえなくても──謝って、謝って、土下座でも何でもして。



 まやちゃんの隣にいることは、許してもらおう。





 


 ──息を切らして、学校中を探しまわった気がする。


 今はまだ授業中だから探す場所なんて限られている。



「あ、屋上……」


 最後の砦。


 そこにいることを信じて階段を駆け上がる。




 屋上にたどりつく手前で話声が聞こえて一度足を止めた。


 ゆっくり、一段ずつ上がっていくと──。



 屋上へ繋がる扉の前で、まやちゃんが泣いているのが見えた。




 だけど彼女は一人ではなく、そばにいたのは──。



「り、く……」


 陸が困ったようにまやちゃんを引き寄せた。



 そんな彼に、まやちゃんも腕をまわしてしがみついている。


 そのときの陸が、あまりにも……まやちゃんを愛おしそうに抱きしめているから。


 あまりにも、大切そうに頭を撫でているから。





 俺は、思わず踵を返していた――。




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