第187話
「ちょ、マジでふざけんな──っ」
目の前のお邪魔虫を、どうにかして振り落そうともがく。
……こいつ、結構重いし!!
そろそろ本気で怒鳴ってやろうかと、口を開いた瞬間──。
ガラッ
ドアが開いて
「え……」
愛しい人の声。
俺が聞き間違えるはずなんて、ない。
……だけど、この時だけは聞き間違いであってほしかった。
「あ……麻井先輩……」
そうわざとらしく、困った表情を浮かべる目の前の女。
……最悪だ。
まやちゃんは一瞬フリーズしたあと、そっとドアを閉めた。
「まやちゃ──っ!!」
身体を起こそうとするけど、この女、マジで重い。
だけどまやちゃんが行ってしまうと焦って、半ば蹴飛ばすように押しのけた。
「ちょっ……普通女子蹴飛ばす!?」
そんな馬鹿女の声なんて聞きもせず、俺は走りだした。
「──まやちゃんっ!!!!」
これでも運動神経はいい方なんだ。
走ってるまやちゃんの背中なんてすぐに見つかって、追いついたら腕を掴んで止める。
「あれはっ、違う……っ」
そこまで言って、俺の口は動かなくなった。
「凛なんて……っ、だいっきらい……っ」
そう俺を睨むまやちゃんの目には涙が溢れんばかりに溜まっていて──瞬きをした瞬間、ポロっと零れてしまう。
世界でいちばん大好きな人を、泣かせてしまった。
世界でただ一人、俺が守らなくちゃいけない人を
世界でいちばん、傷つけちゃいけない人を
……他でもない俺が、苦しめてしまった。
“まやちゃんだって、西川とキスしたのに?”
普通のカップルなら、そう言う人もいるんだろう。
だけど……違うんだ。
俺は、まやちゃんを世界一愛してるけど
まやちゃんは、俺のこと──。
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