第185話
……うん、全部西川が悪いってことにしよう。
どうしても俺はまやちゃんを甘やかしてしまうんだ。
だけど一言、謝ってほしかったなあ……。
……うん、だめだ。俺が謝ろう。
このまま、まやちゃんと口がきけないなんてことになったら俺は死んでしまうかもしれない。
やっと手に入れた大事な大事な女の子。
まやちゃんがどんなに悪くても
俺がどんなに悪くなくても
いくらだって謝るよ。
君が離れていってしまうことに比べたら、どんな理不尽なことにだって耐えてやる。
──そう、こんな風に俺を馬鹿にしちゃうのが。
俺の世界でいちばん大切でたまらない、大好きな人。
頭に血が上って、保健室から飛び出してしまった俺。
今は授業中だから廊下には誰もいない。
ぐるぐるといろんな思いが渦巻いて気がつけば──まやちゃんの教室の前にいた。
まやちゃんのクラスは今の時間、移動教室なんだろう。
無意識のうちにここへ来るなんて、どんだけまやちゃんのことが好きなんだろうって呆れてしまう。
まやちゃんの席なんて、もう目をつぶってもたどり着けるくらい頭にインプットされている。
普段、まやちゃんが座って眺めている風景が目の前にある。
なんだかそれすら愛おしい俺って相当重症なのかな。
──机に突っ伏してさっきのことを思い出してみる。
……あんな風に怒鳴ったことなんてなかったから
びっくりさせちゃったかな。
──やっぱり謝ろうと思って顔を上げると
「神永先輩……」
いつの間にか、あのお邪魔虫が目の前にいてビビった。
……うん、たしか。こんな顔だったと思う。
「何」
そっけなく言い放つのは、慣れたもの。
他の女と話してる暇なんてないんだもん。
「話……聞こえちゃいました……」
……なんの話?
そんな俺の心の声が顔に出ていたのか
「保健室での……。聞くつもりはなかったんですけど!」
いや、聞くつもりがないんなら聞くなよ。
甘ったるい声が気持ち悪い。
「──だから?」
はやくまやちゃんのところに行かせてくれよ。
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