第180話


 そのまま二人の間には重い空気が流れ、ひたすら沈黙が続いた。


 なんとも耐えがたい空間。



 ──結局、私は彼に何も言うことができず学校に着いてしまったのだ。




 教室へ入って机に突っ伏す。

 昨日はほとんど眠れなかったせいか、頭痛がする。


 頭を抱えていると

「ど―――ん!!!」

 と後ろから愛子にタックルされて真面目にイラッとした。


「……何」

 いつもより冷たい声が出る。


「一時間目、体育なんだけど?」

 教えてやったのになんだその態度は、とでも言いたげだ。


 ……体育か。

 しかも大嫌いなサッカー。


 球技は基本的に嫌いなんだよね。


 ああ……と深いため息をついて、席を立った。





「……え、なにこれ」


 気がつくと目の前には白い天井。


 消毒液の独特な匂いが鼻を掠めてここがどこなのかがわかった。


「なんで、保健室にいるの……?」

 起き上がってみると、ズキッと頭が痛んでおでこを抑える。



 頭の中でなぜ自分がここにいるのか整理してみると、だんだんと記憶が蘇ってきた。






 ――愛子に言われるがまま更衣室へ行って、体操服に着替える。


 憂鬱な気分は晴れないけど、グラウンドへと向かった。


 授業が始まり、集合がかかって準備体操をして──。


 そう、何度目かの試合の時。


 ずっと続いていた頭痛がピークに達した瞬間、誰かの足に躓いて転んだ──。



「そこまでは覚えてるんだよね……ってことは、そのまま気を失った?」


 自己分析して、ぽつりと呟いたら


「正解~」

 と、すぐそばで声がした。


「!?」

 人がいたのなんて気がつかなくて、ビクッとする。


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