俺の先輩
第171話
──俺には、お気に入りの先輩がいる。
「ああ、そこ置いといて」
そっけなく言う姿も
「馬鹿言わないの」
呆れたように言う姿も
「ありがとう」
そう言ってはにかむ姿も。
神永先輩に向ける照れたような笑みも
顔を赤らめる姿も
幸せそうな表情も
全部全部、すごく可愛い先輩。
最初は、神永先輩との関係をからかうと見せる反応が面白くて絡んでいたけど、途中からは正直マヤ先輩に構ってほしくて──俺を見て欲しくて。
唯一、マヤ先輩のそばに神永先輩がいないバイト中。(まあほとんど客席にいるけど)
それがいつしか俺にとっての幸せな時間になって。
……ああ、マヤ先輩が好きなんだ。
そう、思った。
「おはよー……」
いつものように、休憩室へやってきてバイトの準備を始めるマヤ先輩。
「おはようございま──っげほ……」
二日前くらいから出はじめた咳が俺の言葉を遮る。
「え、ちょっと大丈夫?」
振り返って俺の顔を見つめる。
そんな彼女にドキッとしてしまうのは、惚れた弱みかもしれない。
「はい……」
ゴホゴホとまた咳き込むと、心配そうに近づいてくる先輩。
「風邪?流行ってるのかな……」
そう呟く。……流行ってるって??
……ああ、神永先輩か。
そういえば風邪で寝込んでるんだっけ?
俺を心配してくれるマヤ先輩の言葉でさえも、神永先輩に繋げてしまって──勝手に嫉妬してるんだからたちが悪い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます