第164話
オムライスを食べ終わると、ソファーに座ってうとうとし始める凛。
「もう寝たら?」
隣に座ってそう言うけど頑張って目をこじ開けている。
「ん……でも……せっかくまやちゃんがいるのに……もったいない……」
背筋を伸ばし、自分の頬をぺちぺち叩いて起きようとしている。
「私もそろそろ帰るし──」
帰る準備をしようと立ち上がる──が、凛の手が私の腕を掴んで引っ張るから、ソファーへカムバック。
「送る……」
「馬鹿か病人」
また少し熱が上がったのか、頬は赤く染まって息も荒くなっている。
こんな病人にそんな鬼畜なことできるか!!!
「絶対、だめ……。こんな時間に一人で帰せない……」
うるうるとした瞳で軽く上目遣い。
うっ……。その顔、弱いって言ってんじゃん!!
腕を振り払って強引に帰ろうとするけど離さない凛。病人のくせに力強いし。
「じゃ、どーすりゃいーのよ……」
諦めてソファーの背もたれに身体を預ける。
「泊っていけば……?」
隣で呟かれた言葉は、聞き捨てならない提案。
馬鹿なのこいつ。とうとう熱でおかしくなったか??
「……ごめん、嘘」
私が反論する前にそう言って掌で顔を覆う。
──ふと、静かなこの空間に目を向けた。
……やっぱ、病気の時に一人きりって寂しいよね……。
もー……ほんと、いつからこんなに甘くなったんだか。
ため息をひとつ落としてスマホを手に取ると家の電話番号を選択し、通話をタップする。
『──はい、麻井です』
何度目かのコール音の後、お母さんの声。
「あ、お母さん?今日……友だちの家に泊まるから」
淡々と告げたけど、結構緊張する。
嘘ついてる罪悪感と言うか、バレないか不安というか……。
『……ふーん、わかった~。迷惑はかけないようにね』
だけど聞こえてきたのは意外にも軽い返事。
……ユルいな、母上。
その後何度かやり取りをしてブツッと通話が途切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます