第163話


 ……いつも私の予想を超えてくるこいつだけど、今度ばかりはまじで意味不明。


 今まで散々悩んでたのって、「美琴ちゃんをどう思うか」じゃなくって「美琴ちゃんって誰だっけ」だったの!?



「バッカじゃないの!?私のバイト先の後輩でしょ」


 そう言うと、また少し考えてから


「ああ……あのお邪魔虫ね……」

 目を細めて心底嫌そうにつぶやく。


「あいつ、まやちゃんとの貴重な時間を台無しにする俺の敵だし!!!!なに、あいつになんか言われたとか!?」


 机からぐっと身を乗り出して聞かれた。


 いや、なにその敵対心。いろいろ間違ってるよ。



 しかも質問してるのこっちなんだけど。


「いや……別に……」

 ええ……あなたの件で言われましたとも。


 意外にも鋭い凛に違う意味でドキッとしたけど、顔には出さずになんとか誤魔化す。



「……どう思うってなに??」

 私の質問に戻ったはいいけど、結局質問返し。


 ……具体的に問わねばならぬか。


「いや、可愛い子じゃん?」

 思わず出た言葉でまた自爆したことに気付いた。


 私も自分で思っていたより馬鹿だったみたいだ。




 ……だけど、凛の口から出た言葉は更に意外というか、呆れたものだった。



「え、顔覚えてない……。俺、まやちゃんのことしか見てないからなあ……」

 そうバツが悪そうに頭をかく。


 あんなに毎回一緒に帰ってるのに顔も覚えてないの!?


 百歩譲って名前を覚えてないことは、まあ仕方がないとしよう。

 顔も覚えてないって、何事!?



 ……なんだか、心配して損したというか……。


 不安になる必要なんて、なかったみたいだ。




 これでミッション達成──なのか??

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