気になる存在

第155話


 ――あれからひと月が過ぎ、桜が咲く季節になった。


「まやちゃん!!!!桜だよ~!桜!!」

 相変わらず、私の隣には凛がいる。


 今は部活が休みの陸と三人で下校中。


「あー、見たらわかる」

 恋人になったからって甘い雰囲気なんてほとんどない。


 まあその原因は私にあるんだけど。


「お花見、しなきゃなー」

 だけどいつも幸せそうにする凛を見て、そのありがたさを実感してる。


「ね!!春と言えば、桜!新学期!」

 ……なんでそんなにはしゃいでるのかは不明。


 一か月付き合っても、彼の思考回路にはついていけない。


「そして~クラス替え~!!」


 ……ああ、こいつが言いたいことがなんとなくわかった。


「今年こそ、まやちゃんと同じクラスになるんだ~!!」

「まってそれ地獄じゃん」


 同じクラスなんて、今以上に一緒にいるってことでしょ!?それとんでもない疲労!!考えただけでしんどい!!


「……え、でもさ。マヤと俺は文系だから一緒になるかもだけど凛は理系だろ??同じクラスにはなんないんじゃね?」


 そこで陸のナイスな言葉。


「──ハッ!!!!!!」

 重大な事実に気付き一瞬固まったと思ったら、凛の表情がどんどん沈んでいく。


「ラッキー」


その私の言葉が追い打ちをかけて、凛は可哀そうなくらい落ち込んだ。


「うわあああああん!!俺寂しくて死んじゃうよ!!今からでも文系に……」

「アホか」


 彼の無謀な提案を一刀両断。


 呆れていると陸が苦笑しながら私に耳打ちする。

「慰めてやれよ、凛が拗ねたら後々面倒だぞ」


 ……確かに。


 今だって不貞腐れて、つま先で道路に落ちている石を蹴ってる。


 そしてコソコソ話をしている私たちを睨んでいた。


「……凛。別に一緒のクラスじゃなくてもさ、今だって毎日会ってるじゃん。どうせ、クラスが変わっても来るんでしょ?もし友だちできなかったら、お昼ごはんぐらいなら一緒に食べてもいいけど……」


 ただの口約束だし……と思いつきで言ったけど、彼のだんだん輝いていく表情にしまった、と思った。


「え!!?本当!!?どうしようそれって恋人っぽい!!……よし、決めた!!俺、友だち作らない!!」


「言うんじゃなかった」


 ……単純馬鹿にもほどがある。


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