第154話


「ふふふ~ん。これでまやちゃんに悪い虫が近づかなくなるかなあ~」


 ……なんて、のんきに鼻歌をうたいながらご機嫌な凛に、私はすねを蹴って制裁を加えてやった。


 突然の激しい痛みに声も出ず、うずくまって耐える凛。


 ……自業自得だ、ばか。



 凛が離れた隙に女子に囲まれる私。

 ……怖いんだけど。


「麻井さんはいつもあんなに迷惑そうだったのに、神永君のどこを好きになったの??」


 と詰め寄られましても……。


「え……。えーっと……一生懸命なところ?」

 言葉では表しにくい答え。


 抽象的すぎて、相手も微妙な反応だった。


「ふーん、そっか……あんだけ溺愛してるもんね。束縛とか凄くなりそう」


 ……ああ、それは付き合う前からです。


「あーあ、俺、隠れ麻井さんファンだったのになあ」

 ってどこからか聞こえる声にも


「おいコラ!!今の誰だ出てこい!!」


 鬼のような形相で私の周りにできた人ごみをかき分けてる。


 ……ほらね。



「ねー、マヤ先輩。悪いこと言わないから俺にしとけば?」


 いつの間にか、私のそばまで移動してきている西川君。


「あーはいはい、考えとく~」

 と適当に流すと意外にもむすっとしてる。


 ……可愛いなおい。


「ごらあああああ!!西川はまやちゃんにお触り禁止!!半径五メートル以内に入るな!!」


 大分、お怒りの凛。昨日のことを気にしてるようだ。



「まやちゃん!!!!」

 なかなか私のそばから離れようとしない西川君を見かねて


「おいで」

 両手を広げて私をハグする準備万端の彼。



 恥ずかしいから嫌だ──と言いかけて、その言葉を飲み込む。


 凛の目が少し、揺れているのが見えた。


 ……ヤキモチ妬きすぎて泣くとか子どもか!!



 はぁ……とため息をついて私は一歩踏み出す。


 しょーがないから、大目に見てあげる。



 彼の胸に飛び込むと周りがまた、ざわめいた。


「麻井さんのデレ!?こりゃ破壊力あるなあ……」

「ちょっと神永君、嬉しすぎて白目むいてるんだけど!!?」


 凛は私の珍しい行動にフリーズしたみたいだ。



 ……あーあ、凛のせいでバカップル決定だな。


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