第149話
「……もし、神永君と付き合ったら、さ。うざったい呼び出しも、ストーカーもなくなるのかな……」
「え……?」
……何を口走ってるんだろう、私。
こんなこと言ったら神永君はまた勘違いするし、期待するよね。
──だけど、もう戻れないところまで来てしまったから。発した言葉も、気付いてしまった気持ちも。
「さっきのやつがさ、『神永なんかに』って言ってたの……ものすごい腹立った。こんなに諦め悪くて、こんなにポジティブで、こんなに一生懸命で、こんなに私のこと想ってくれる人なんて──神永君以外にいないのになって思った。さっきもね、怖くてたまらなくて、ずっと……『神永君、助けて』って心の中で叫んでたの。神永君のこと、無意識に呼んでたんだよね。そしたら、ほんとに来てくれた」
「……うん」
私の言葉を真剣に聞いてくれる目の前の彼。
もっと大騒ぎするかと思ったけど一応空気は読めるみたいだ。
ゆっくりと吐き出す私の言葉を噛みしめるように、かすかに頷きながら受け止めてくれる。
そんな彼に、もうどうにでもなれって半ば諦めのような感情も出てくる。
「……神永君の匂いは安心するし、笑った顔が見たいと思う。神永君がそばにいないとそわそわする。──ほんと、困ってるんだけど。最近、神永君のことばっかり考えてる」
そう言いきって彼を見ると──神永君は唇をかみしめて眉を寄せ、こっちまで苦しくなってしまうくらい辛そうな顔をしていた。
え、なんでそんな顔するの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます