第134話


 運動神経抜群の神永君は試合開始からバンバンとゴールを決めていく。


 さすが部活の助っ人を頼まれるだけのことはある。


 うちのクラスにはバスケ部が多いから、そこそこ強いはず。

 それに対して神永君のクラスのメンバーにはバスケ部がいない。


 なのに、彼一人で対等に戦ってるからたいしたもんだ。



 ……だけど、順調だったのは前半だけで。


 相手チームの強みは神永君だけだと言っても過言ではないから、うちのチームも彼を徹底的にマークしている。


 思うように動けなくて、神永君も悔しそうに顔を歪めた。


 前半に神永君が入れた点もどんどん返していって──ついに、うちのチームが一歩リード。



 残り時間も少なくなって、二点差。


「……顔、怖いよ。マヤ」

 愛子がまたにやりと笑う。


「……うるさい」


 自分でも、わかってる。

 自分のクラスがリードして、本来ならば喜ばしい状況のはず……なのに。


 なんでこんなにイラついているんだろう。



 両チームの攻防が続いて、点差は動かないまま残り数秒。


 わああっと周りが騒いだと思ったら──ボールを手にしたのは神永君。


 久々に、彼にまともにボールが渡った。



 だけど素人相手に尋常じゃないくらいのマーク。


 コートの奥から彼の入れるべきゴールまでかなり距離があるけど、これじゃあまともに進めないし、かわしていけたとしてももう時間がない。


 チッと舌打ちしていた私には、真横にいる愛子しか気付いていないようだ。

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