第128話
──ん??あれ、「にっこり笑った」??
さっきまでのクールな表情も男前だったけど、笑うと少年ぽさが出て可愛いじゃないか。
ふざけながらもちゃんと言われたことはやるんだから、生意気さもちょっとは大目にみてあげよう。
「……ん、やるじゃん。えらいえらい」
そう言うと彼は頭を私の目線まで下げて
「頭、撫でてくれないんですか」
なんて言うもんだから
「しょーがないなあ」
わしゃわしゃと撫でてやる。
何度も言うけどイケメンは嫌いじゃないからね。
「──マヤ、あれ」
突然私たちの間に割り込んで、客席のほうを指さす廉先輩。
「……げ」
そこにはかつてないほど不機嫌な神永君。
……来てたの忘れてた。
彼の痛いくらいの鋭い視線が突き刺さってくる。その視線だけで人ひとり殺せそうなくらいだ。
「あーあ、怒ってるね。神永先輩」
肩をすくめて私を見る西川君。
ものすごい他人事だけどあんたが原因だからね!!!
「面倒だぞ、これは……」
神永君のご機嫌取りをしないといけないこの後のことを考えるとため息しか出ないよ。
隣では手で口を押さえ笑いをこらえてる廉先輩。
「ぷぷ……。お前が、投げキッスでもしてやれば??機嫌直るんじゃね??……ぷっ」
面白いことを考えたとばかりに提案してくるけど
「できるか!!!!」
おいコラ!!!純粋な乙女のキッスを何だと思ってるわけ!!!?
「じゃあ、手でも振ってみたらどうです??」
廉先輩に便乗するように右手を上げての発言。
──おい西川!!てめえも面白がってんだろ!!
でも、ちらりと見たあの不機嫌オーラに負けて
「おーい……」
片手をあげて控え目に手を振ってみる。
すると神永君は声も出ないくらい驚いていた。
「…!!!!!!!!!」
ガタンと音がして、神永君が椅子から転がり落ちている。
そしてさっきの不機嫌そうな顔なんて吹っ飛んで思いっきり手を振り返してくれた。
興奮しすぎて両手で大きくハートマークまで作ってる。
……いや鼻の下伸びてるから!!!
だけどやっぱり西川君のことは気に食わないようで
「マヤ先輩ここって──」
と私に話しかけるたび、神永君の視線が厳しくなっていくのがわかった。
……これからどーすんの、これ。
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