一難去ってまた一難
第126話
ここは私のバイト先。
「おっれの、かわいーい、まーやちゃん♪」
「勝手に歌まで作るなよ」
しかもお前のじゃねえ。
今日も当たり前のようにいる残念イケメンは、カウンターの端で両手で頬杖をついてご機嫌だ。
……正直、迷惑なんだけど。
げんなりしている私に気付いているのか気付いていないのか、神永君は私に話かけては仕事の邪魔をしてくる。
「俺ねえ~、まやちゃんがヤキモチ妬いてくれるなら……ちょっとだけ、女の子と喋るのも悪くないかなあ~って思ったの!!!でもね、でもね!!!やっぱり、まやちゃんに嫌われたくないし、まやちゃん以外と喋っても楽しくもなんともないからやめた!!」
……もうその話題は止めてくれ。顔から火が出そうになる。
だけどこの前の事があってから、神永君は異様に機嫌が良い。鼻歌交じりにラブソングを歌う神永君をジトッとした目で見ていると私の背後から声が聞こえてゾクッとした。
「へ~、マヤがヤキモチねえ……意外な一面」
──出た悪魔め。
いつから聞いていたのか、ニヤつく先輩にいらっとした。
「可愛いとこあるじゃん」
それは褒めているのか?
「そこ!!!まやちゃんを口説かない!!!!!」
廉先輩をビシッと指さして目くじらを立てる神永君。
この「可愛いところ」は口説いてるんじゃなくて、からかっているんだってことに気付かない馬鹿な人だ。
廉先輩も笑いを堪えているのか、肩が震えて口角もひくひくしている。
「お前ほんと飽きねえな……っ」
笑いを誤魔化すのに一つ咳払いをすると何かを思い出したかのように「あ」と呟くから先輩へと視線を向けた。
「今日から新しくバイトが入るから。マヤ、トレーニングしてやれよ~」
と軽ーく頼まれる。
私そんな指導できるような人間じゃないんですけど。
「え~。指導係は廉先輩じゃないんですか~??」
そう反論してみるけど、この先輩には通用しない。
「俺はお前専用」
……その言い方、なんか引っかかるんだけど。誤解を生みそうだな、おい。
そして、それにまんまと引っかかった一名。
「異議あり!!!!」
「お前は黙ってろ」
最近、神永君をからかうのが趣味みたいになっている廉先輩は
「喜べ、イケメンだ」
とまた煽るようなことを言う。
しょうもない事だったら蹴飛ばしてやろうかと思ったけど──その一言は聞き捨てならない。
「やった」
そりゃあ私も女の子だもの。イケメンは好きだ。
「嘘!!!!!!?嘘だと言って、廉さん!!!!!!!」
「お、予想通りの反応」
からかわれていることにあまり気がつかない神永君。
頭を抱えてカウンターに突っ伏す彼はすぐにがばっと起き上がって
「今すぐ担当替えてください!!!!」
と無茶なことをお願いしてまた廉先輩を爆笑させてる。
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