第119話


「それじゃ、俺も待ってよーかな」


 何かを思いついたかのようににやりと笑った陸。


 彼の言葉を聞くと拗ねたように唇を尖らせるイケメン。


「それはだめ!!!まやちゃんと二人がいいのーーー!!!」

 陸の両肩を持って前後に思い切り揺らす。


「やめろって!!」


 頭がぐわんぐわんと揺れるから気持ち悪くなったのか、神永君の腕を振り払って逃げる陸。


「……俺だってマヤと一緒に帰りたいし??」

 神永君から少し距離を取ると懲りずに挑発する。



「ふざけんなー!俺とまやちゃんの貴重な時間を……!!!」


 わなわなと震える神永君、なんだけど──。



 何が貴重な、だよ!!!


 休み時間から帰り道、バイト先までお前はアホみたいに会いに来てるだろ!!!



 呆れて何も言えない私に、陸が振り向いて

「じゃあ今日マヤの家行ってもいい??」

 って聞いた。


 陸はうちのお母さんとも仲良しだから、よく家に来て晩ご飯を食べていく。


「え、別に──」

 いいけど……と言おうとして、遮られる。


「ダメに決まってるでしょ!!!」


 ……この男が黙っているわけもなかったんだ。


「お前に言ってねーだろ!!」

 陸も意地になって引き下がらない。


 ……くだらないんだけど!!!!


 そんな私たちの会話に

「いいかげんにしろ、教室もどれ馬鹿どもが」


 ……愛子の鉄拳が二人に落ちたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る