第118話


「おいコラ、私には挨拶もなしか」


 私の隣では鬼のような形相の愛子。


 ……親友の私が見ても恐ろしいよ。


「す、すいません!!!!!!」

 二人は慌てて声をそろえ直角にお辞儀する。


 ……このやり取りも、毎日やってる。


 学校一モテるイケメンと、子犬系男子で人気な男が土下座する勢いで謝っている光景はすごく笑えるんだけど。


 学習しろよ、お前らは。




「──ねえ、まやちゃん!!!今日一緒に帰れる!!?」

 目をキラキラさせて「帰れるよね!?」って付け加えた彼は期待を込めて覗きこんでくるけど


「無理」

 いつも神永君は突然すぎる。


「え!!!なんで!!!」


 いや、私だっていつも暇なわけじゃないんですけど。


「今日はバイトないはずだよね!?」


 ……やっぱりシフトは把握済みか。


「委員会」


 そう言うと、神永君はホッとしたような顔をした。


「まってる!!!!」


 「待っててもいい?」とかじゃなくてもう決定事項なんだね。

 ……まあ、別に拒否する理由もないし。


「……勝手にすれば」


 すると神永君は両手を上げて子どもみたいに喜ぶ。


 これが神永君の最大級の喜びの表現。



 ……一緒に帰れるってだけでこんなにも喜んでもらえるなんて、悪い気はしないよね。


「わーい!!じゃあ終わるまで、まやちゃんの机でお昼寝でもするかな!」


 さらっと言ったけど聞き逃さなかったぞ。


「帰れ」


 ……前言撤回。

 昼寝するなら自分の机を使え!!

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