第108話


 ──やめてよ、揺らいじゃうから。


 おとなしく言うこと聞いてよ。

 普通、こんなこと言われたら傷つくでしょ?



 好きな人が、他の男の方を取るんだよ?


「……それって、陸君の事が好きだからなの?彼に誤解されたくないから?それでも俺はやめないよ。……普通なら、すきな人の幸せを願うのがカッコイイのかもしれないけど──俺は、諦められないよ……」


「まやちゃん、お願いだから……もう俺を好きになってなんて、言わないから……っ。隣で歩かせてよ。一緒に居させてよ……。お願いだから、俺を拒否しないで──」


 彼が近づいてきて、私を抱き締める。


 私はそれを突き放すことも、かといって腕を回すこともできずされるがままになっていた。



 ねえ──私は、どうしたらいい?


 陸が好き?


 ──好きだよ。


 でも、恋愛対象かと言われたらわからない。

 物心ついたときから一緒にいて、育ってきたんだから。



 ──じゃあ、神永君は?

 私は神永君の事、すき……??



 陸の悲しそうな顔は見たくない。

 だけどやっぱり、神永君の泣きそうな顔を見ると心臓を締め付けられるように苦しくて、震える肩を見ると鼻の奥がツンとする。



 いつも輝いてる笑顔を、もう一度見せてほしいって思ってしまう。



 ──私、自分がどうしたいのかもわからない。


 廉先輩。



 こんなときは、どうしたらいいですか?

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