第106話
「……お前は、どうしたいわけ??その幼馴染のために凛のウザいくらいの愛情を踏みにじんの?凛を拒否ったところで、その幼馴染の気持ちに応えてやれんの?それとも幼馴染を見捨てて凛を選ぶか?まあ確実に今の関係性は壊れるだろうけど」
廉先輩は、気持ちがいいくらいバッサリ言いきった。
……そう、どっちを取っても片方を傷つける。
両方傷つけないなんて上手い話、あるわけないんだ。目頭が熱くなってぐっと拳を握りしめるけど、廉先輩は容赦なく続ける。
「お前にとって、どっちが大切なのか天秤にかけてみろよ。どっちの悲しむ姿を見たくないのか、どっちの気持ちを受け入れるのか。『幼馴染が』『凛が』……じゃなくてお前が、どうしたいか……だろ?」
立ちあがって私の頭にポンと手を置く。
いつの間にか怖かった表情は無くなっていて、今まで見たことないくらい優しく微笑んでいる先輩に驚いた。
……私が、どうしたいか?
その言葉を聞いて、真っ先に思い浮かんだのは陸の辛そうな顔。胸がぎゅっと締め付けられるような感覚。
──陸に対して、恋愛感情があるかと言われたらそれは肯定できない。
だから私が陸を選んだところで、神永君に感じたものを陸にも感じるかはわからない。
神永君の事は、確かに気になっている。私の中で特別な存在であることはもう自分でも認識している。
だけど、陸を捨ててまで彼のもとへ行くのは違う気がする。……絶対に、違う。
いつだって私を支えてくれた陸。
お父さんが単身赴任の私の家で、陸はいつもお父さんのような存在だった。
──何度、陸と季節を共にしてきただろう。
何度、寄り添って歩いてきただろう。
家族よりも家族みたいな存在で、今までの私を作ってきたのは陸がいたからこそだし、これからも私は陸がいないと生きていけないとさえ思う。
……だから、私は。
私の答えは「私は、陸を悲しませちゃいけない」。
──そう決めた。
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