どうしたいか、なんて

第105話


 ――その日のバイトは、ミスばっかりで。


 店長に心配されて、廉先輩に辛辣なお言葉をいただいて……本当に、散々だった。


「──お前、どうしたわけ」


 呆れた廉先輩は店長に頼んで私のために休憩をとってくれた。


「すいません……私情をはさんでしまって」

 ただただ申し訳なくて、頭を下げた私。


 だけど廉先輩の表情は強張ったままだ。


「……謝罪が聞きたいんじゃねえんだよ。どうしたのか聞いてんの。お前の抱えてるもんが解決されなきゃ、このままなんだろ?こんだけミスされたらたまらねえよ」


 迷惑をかけてることに嫌気がさして涙が出そうになる。


 何だかんだ、いつも気遣ってくれる廉先輩にここまで言わせてしまっていることが悔しくて、唇を噛みしめた。



 ……でも、悔しいけど誰かに話さなきゃ解決できそうもない。

 廉先輩なら、なにか答えを見つけ出してくれるだろうか。ヒントを与えてくれるだろうか。


 恐る恐る、話し出す。


 先輩は休憩室のソファに座って足を組んでいる。


「幼馴染が、いるんですけど……。神永君の事、良く思っていなくて。彼と一緒にいた時の、陸の苦しそうな顔が頭から離れないんです……。今まで、こんなに大切にされてきたことにも気付かなくて、こんなに愛されてきたことを知らなくて……本当に彼に申し訳ないんです……」


「──陸はいつも私を助けてくれるヒーローなんです。私は、陸が辛そうにしてるのを見てられなくて。……でも、神永君の純粋な気持ちもちゃんと伝わってくるんです。からかったり、遊んだりしてないって……わかってるんです。だから、どうしたらいいのか分からなくて。陸の事も、神永君の事も悲しませたくない。……結局は、どっちにもいい顔したいだけなんでしょうね」


 廉先輩はソファの肘かけにもたれかかって頬杖をつく。


 じっと探るように見つめてくるから思わず目をそらしてしまった。

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