第75話


 私の誕生日には


「これ、マヤちゃんの誕生花なんだって」

 にっこり笑って手渡されたのはカトレア。


 誕生花だから彼が選んだわけじゃない。たまたま、私の誕生花がカトレアだっただけ。

 そう分かっていても嬉しくなる。


 ──カトレアの花言葉は「あなたは美しい」。



 ……今思えばこの時私は先生への想いを自覚した気がする。




 模試でいい成績を取れた時には、えらいえらいって頭をなでてくれた。A判定が出た時なんて二人で抱き合って喜んだよね。



 クリスマスが近くなった授業で私がマフラーをあげると目を細めて喜んでくれた。


 その日から毎回そのマフラーをつけてきてくれて、胸が一杯になったのを覚えてる。


「マヤちゃんがくれたんだから、つけないわけないでしょ」

 って言ってたのも、忘れるわけないよ。




 ──受験が終わった日、授業もないのにわざわざ会いに来てくれて


 「お疲れ様」っていつもみたいに笑うから、緊張が解けたのと先生に会えて嬉しいのとで涙が止まらない私をそっと抱きしめてくれた。


 だけど私は驚いたのとドキドキしたのとですぐに涙は引っ込んだんだっけ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る